■連載/あるあるビジネス処方箋
ここ2週間に、出版社や広告代理店などの編集者4人からメールが届いた。いずれも、私が仕事で接する相手である。メールは、退職と人事異動の挨拶だ。退職、異動は5月末∼6月初旬のようだった。4人の平均年齢は30代半ばで、全員が男性。結論からいえば、私が想定していた通りの結果となっていた。今回は、4人のここ3∼5年の言動を振り返りながら、職場での生き方を考えたい。
退職した男性(40代後半)、副編集長=課長、社員数400人程の出版社
男性は、上司(編集長)やその上(役員)を徹底して批判し続けた。「あんな奴らでは、(この会社を)仕切れない」「もう、うちの会社はダメ」…。私と1対1で話すときに、盛んにこき下ろす。おそらく、5年ほど前に編集長になることができずに、年下の男性がその時期に編集長になったことに逆恨みをしていたのだと思う。下の世代(20∼30代)に「こんな会社に残っていてはだめだ」と暗に辞めることをそそのかしていた。なぜか、男性はそのまま5年間も残っていた。だが、何も変わらなかった。むしろ、年下の編集長は役員候補にもなってしまった。社内の誰もが、男性にはついていかなった。結局、孤立し、退職せざるを得なくなったのだろう。
他部署へ異動し、副編集長=課長に昇格した男性(30代後半)、社員数250人の出版社
この男性は、同世代の編集者と比べて明らかに処理能力が高い。3∼5ランクは上にいる。例えば、電話やメールでの対応は迅速で、極めて正確。じかに会い、仕事についてやりとりをしても、理解力が高く、応用力もある。一方で、謙虚で、誠実。下の世代にはやや厳しく、辛辣かもしれないが、役員からの評価はすこぶる高い。
最大の武器は、処理能力。群を抜いて高いがゆえに、1ずつの仕事が安定している。このようなタイプは大企業には一定数いるのかもしれないが、250人程の会社ならば少ないから目立つ。ちなみに、同世代の社員の中では昇格は相当に速いという。
編集長=部長になった男性(40代半ば)、社員数200人の出版社
この男性も、処理能力が高い。時間内で大量の原稿を整理する。しかも、その精度は高い。同世代の中では、群を抜いている。交通費や外部スタッフへの支払いの処理も正確で、速い。部下たちからも、一目置かれている。役員からも信頼されているという。前述の2の男性もこの男性も共通項は、1つずつの仕事を迅速に確実に素早く処理する力がほかの社員を圧倒していること。これで安定感を醸し出し、周囲から信用を得るようになる。
大多数の会社(特に社員数が200∼300人以上)は、様々な仕事がある程度は平準化、標準化、規格化、マニュアル化されている。つまり、ほとんどの社員がそれぞれの仕事を時間内に処理できる仕組みができているものだ。その仕組みがないと、この規模の会社は動かない。言い換えると、社員間で仕事の差は大きくはつかない。差が大きい場合は、仕組みが十分にできておらず、会社組織としては未熟なはず。さらにいえば、個々の社員の差がつかないからこそ、時間内に素早く、確実にできる人は大半の職場で重宝される。