7、自意識過剰
しつこく「優位」であろうとするのは、強烈なセルフイメージがあるからなのだと私は観察している。例えば、「俺はこのレベルの人よりも、3ランクは上にいないといけない」というものだ。私が2017年2月に取材した著名な心理学者(有名私立大学の名誉教授)は、このように話していた。
「誰もが、こうなりたいという要求水準がある。例えば、社会的な地位や収入である程度のラインがある。水準に達しないと、多くの人はそこに不満を感じる。本来、成熟した大人は要求水準に現実が追いつかないとき、不満を持ちながらも、受け入れるものだ。それが大人になる、ということ。
ところが、このタイプはそこまで精神が成熟していない。いつまでも、メンタリティーが子どものままだから、要求水準に懸命にしがみつく。たどり着けないから、不満を持ち、例えば、家族や弱い人に当たり散らしたりする。上司ならば、部下に威圧的な言動をとり、抑えつけ、従うようにして、優位であろうとする。それがこの人たちの憂さ晴らしであり、心のバランスの保ち方なのだろう。自意識が極端に過剰であり、神経症なのだ。
神経症の人は、自分との折り合いをつけることができない。あるがままの自分を受け入れらない。劣ったり、負けた自分を認められない。その不満を受け入れるだけの力がない」
これは17年当時、学者が私に話していたことをほぼそのまま書いたものである。この言葉を聞いたとき、私はパワハラを繰り返す人はまさしく、神経症に思えた。
最後に…。解決策はたった1つしかないのではないのだろうか。この人たちからは、離れるべきなのだ。あなたが部下で、このタイプが上司ならば深入りをしてはならない。可能ならば、異動願いを出して、ほかの部署へ移ったほうがいい。左遷になったとしても、精神の健康を守るためには好ましいと思う。「自分との折り合いをつけることができない」人のえじきになるなんて、バカバカしいではないか。結局は、ストレス発散のはけ口にされるだけのこと。実は、このあたりはパワハラを議論するうえで外せない一面なのだと私はかねがね考えている。
パワハラをする人の「自己愛」について知りたい方は、「他人を攻撃せずにはいられない人」(著 片田珠美、PHP研究所)をお読みいただきたい。心の健康を守るためにも、必読の書だと思う。
文/吉田典史