「アメリカにあるスタートアップシティ」と聞いてまず思い浮かべるのは、サンフランシスコにあるシリコンバレーだろう。
GoogleやFacebookなど数多くのスタートアップ企業はシリコンバレーから誕生した。では、アメリカで2番目に大きなスタートアップシティはどこだろうか?「世界の中心地」ニューヨーク?いや、違う。実はボストンなのである。
アメリカで2番目に大きいスタートアップの街「ボストン」
2018年、スタートアップ資金調達額でニューヨークを上回り、アメリカで2番目に大きいスタートアップシティとしてボストンがランクインした。
アメリカ最古の大学であるハーバード大学やテクノロジー系に強いマサチューセッツ工科大学(MIT)をはじめ多くの大学が集まる学術都市ボストン。
なぜボストンで多くのスタートアップが生まれているのか?その理由に迫った。
なぜボストンでスタートアップが生まれやすいのか?
ボストンでスタートアップが生まれやすい理由として3つ考えられる。
1.起業を身近に考えられる教育制度
MITをはじめとするテクノロジー系の大学では、教授が自分の開発した技術や商品を元に起業をしたり、自分の研究分野と関連している企業の顧問になるなど、アカデミアとビジネスの2足の草鞋を履いている。このような教授の姿を見て育った学生は、起業を身近に感じているのではないだろうか。
また、起業家をサポートするプログラムを大学がバックアップしている制度も大きい。例えば、ハーバード大学が実施している「ハーバード・イノベーション・ラボ」では、起業のアイデアを持つ学生に対し、12週間のサポートプログラムを1学期ごとに提供している。
メンターによる指導や、技術リソースの提供、出資者の紹介など強力なコミュニティを提供するだけではなく、実際に起業家にビジネスについて相談できる時間や、著名な起業家とディナーをできる時間なども提供している。
さらに、ハーバードやMITなどでは毎年、起業を志す学生のカンファレンスが開催されている。先日は、ハーバード大学のMBA学生による「Social Enterprise Conference」というカンファレンスが開催された。
Photo: http://socialenterpriseconference.org/
優勝者には賞金が与えられ、ビジネスの資金となっている。
2.気軽に情報交換できるコワーキングスペースの存在
We Workなど日本でもメジャーとなってきている、フリーランスや起業家が利用するコワーキングスペース。ボストンで有名なコワーキングスペースと言えば、「Cambridge Innovation Center(CIC)」が提供しているものがある。
ハーバード大学があるエリア「ケンブリッジ」にあるCICには、世界最大級のコワーキングスペーがあり、これまでに4,500以上の会社の利用実績があり、現在も1,100社以上が入居していると言う。
多くの起業家が集まっているということは、それだけネットワークが拡大し、情報も流れやすい。
さらにCICには「ベンチャーカフェ」というカフェが存在している。ここは、コワーキングスペースを利用している起業家達がコーヒーブレイクに利用しており、お互いに情報交換をしたり、事業のアドバイスをし合ったりしている。
また毎週木曜の15時~20時までは、一般にもこのスペースを開放しており、起業を考えている学生などがここに行き、投資家に自分の事業アイデアをプレゼンしたり、名刺交換をしてネットワークを広げることができる。
ユニークなのは、お酒を無料提供しているということ。格式ばったプレゼンではなく、お酒を飲みながらラフに自分の事業をPRすることができる、ということ。
※ただ、きちんと説明できないと鋭いツッコミがどんどん来て撃沈してしまうので要注意。
3.情報が循環しやすいコンパクトな街
ボストンはとてもコンパクトな街で、アメリカで住むならば車は必需品とよく言われるが、ボストンでは車がなくても、電車やバスなどの公共設備が整備されており、何の不自由もしない。
大学、企業、オフィスなどが半径5km圏内に収まるほどコンパクトな街であるボストンでは、人や情報が循環しやすく、これがベンチャーが生まれやすい要因になっていると考えられる。