上司は日ごろから常に自分が正しく、常に部下や同僚に問題があるという捉え方をするようだ。自分が常に正しいと信じ込んでいるならば、あえて話し合う必要はなく、その上司の思うままにさせておくのがいい。いつしか、この部ではほとんどの社員が意見を言わなくなったという。
前述の女性社員のようなタイプが誕生するのは、こういう背景があるからだと私は思う。結局、意にそぐわないと感情をむき出しにする上司がいるから、女性はそれを見て「学習」するのだと私は思う。
10数年後、上司は役員になった。女性は30代後半で課長に昇格した。嘘のような本当の話である。聞くところによると、上司の同世代(現在、50代後半)はほとんどが20~30代で退職した。ライバルがおらず、倍率1倍の役員昇格といえよう。女性の同世代も、男女ともに半数以上が20~30代で退職したという。私の観察では、社員数100人以下の会社ではこういう人事が頻繁に起きている。
この上司や女性は現在、自分の部下の前で子どもじみた行動をとるようだ。相変わらず、感情をむき出しにして、意のままに動かそうとする。ところが、部下たちを盛んにけなす。小さな会社の社長や役員を取材すると、自社の社員をけなすことが多い。中には、こちらが憂うつになるほどに社員をバカにする役員もいる。自信のなさや劣等感が透けて見えてくる気がする。社員の側にも問題はあるのかもしれないが、実はその社長や役員もそれなりのレベルなのだと私は思う。似たものどうしであり、ある意味でバランスがとれているのが、会社なのだ。
感情をむき出しにして、子どもじみた行動をとる社員がいたら、その上司やさらに上の役員、社長などをそっと観察してみよう。似たものどうしである可能性が相当に高いはずだ。仮に読者が20代で、このような会社にいるならば、私は転職を勧めたい。今の会社の前途は明るいとは言い難いからだ。その若さで、冴えない上司たちに人生を捧げるなんてあまりにも惜しいではないか。
文/吉田典史