■連載/あるあるビジネス処方箋
子どもの頃、何かの競争で勝てないと泣き出す子がいなかっただろうか。周囲が配慮し、ご機嫌をとり、ついにはその子の思うままになる。本人はおそらく、内心、ほくそ笑んでいるのだろう。「弱者」を演じつつ、利益を獲得しようとしているように私には見える。
このような子どもじみた行動をとる会社員を少なくとも5~10人は見たことがある。勤務する会社は、そのほとんどが社員数100人以下だった。組織や様々な仕組みが未熟であるがゆえにいわゆる、人事マネジメントが大企業のようには機能していない可能性が高い職場である。
得てして、こういう職場には風変わりな社員がいる。その1つが、思うままにならないと泣き出す社員だ。大人とは言い難い妙なプライドを持っていて、それが刺激されると興奮する。これらの言動で特に印象に残っているもの、その背景にあると思われるものを私の観察を通じた考えをもとに紹介しよう。あくまで、「反面教師」として参考にしてほしい。
15年ほど前、自分の企画を会議で上司(40代、男性、部長)から否定されると、20代後半の女性は黙った。斜め下を見つめ、怒っているようだった。外部からオブザーバーとして参加した私はテーブルを隔てて向かいの椅子に座っていた。女性のしぐさや表情の一部始終が見える。会議が終わるまで、上司は女性のご機嫌をとって話しかけたが、下を見たままだった。しばらくすると、泣いていた。会議の参加者10人程は、しだいに発言をしなくなった。上司から聞くと、会議が終わり、部員が自席に戻った後、女性は周囲と話をしなかったようだ。数日間、ふてくされたままで黙っていたという。
部員たちによると、女性は前々から意にそぐわないことがあると感情をむき出しにしていたようだ。そして、泣き始める。本来、上司は厳しく指導をするべきだが、しようとしない。彼女は味をしめたのか、何度も繰り返していたようだった。これは事実上、上司と部下の関係が逆転している。女性がふてくされると、上司は仕事をふらない。なぜか、ほかの部員にまかせていたようだ。誰が管理職で、誰が部下であるのか、もはやわからなかったという。
私の観察では実は、上司もまた、子どもじみた行動をとる。特に目立つのが、自分の考えや意見に疑問を呈する部員がいると、感情的になり、否定することだ。会議で「自由に意見を言ってほしい」と言いながら、部員が部の運営のあり方に意見を言うと、終了後、その男性だけを残し、「TPOをわきまえて発言するように」と説教したという。しかも、「君の人事評価を下げるよ」と脅していたようだ。