はたして、どちらが正しいのか。クラプトンの母国はイギリス、UK盤が正しいに違いない。念のためCDは持っていないので、アップルミュージックで聴いてみた。結果は、全曲UK盤と同じだ。日本盤、大チョンボ(この単語、今でも生きている?)か!? さらに調べると、1987年に再発された日本盤の帯には、“オリジナル・テープよりデジタル・マスタリング”と謳われている。探し当てて購入(2000円なり)、聴いてみるとUK盤と同じだった。ちなみにこの再発盤、音の良さは74年盤と同程度だ。
ステレオ録音である音を右から出すか左から出すかは、アーチストをはじめスタッフの感性や熟考や勘によるもので、どっちでもいいことでは決してないと思う。左右が明確にわかる有名曲のひとつに、クイーンの「ボヘミアンラプソディ」がある。曲半ば、♪ガリレオ、ガリレオ……♪の連呼は、右→左→右→左→右と続く。フレディ・マーキュリーは、決して左→右→左→右→左ではないと判断してこうしたと確信する。
なぜ、左右逆になってしまったのか?
『461オーシャン・ブールヴァード』が発売された74年、僕は受験生とはいえ当時の音楽誌は結構読んでいたしラジオも聴いていた。左右逆だという記事や発言を、見たことも聞いたことも記憶にないが、当時は話題になったのだろうか? 出版の世界では美術品など、左右逆版で印刷・発売してしまうと誰かが気づき、謝罪ときには回収に至る。しかし『461オーシャン・ブールヴァード』では、少なくともそういうことは起きなかった。
クラプトンがメインの第18回「レコードの達人」、『いとしのレイラ』はUKマト1とUSマト1を聴き比べる。リタイア後のレコード購入は控え気味だったが、クラプトンでレイラなしはないだろうと、久しぶりに散財してしまった。英米合わせて、海外からの送料込みで約3万円なり。録音はかなりライブっぽく、ときには割れている。イベントを開催するライブハウスの大型スピーカー、アルテックではどう聞こえるか楽しみだ。
『いとしのレイラ』UK盤(左)とUS盤。UK盤には“DEREK & THE DOMINOS・LAYLA”という緑色系の文字が入る。