自分を過信する
判断能力が低い人は、自分を過信する傾向が強い。同世代の社員と比較し、仕事力は見劣りする。だが、優秀と思い込んでいるフシがある。それも無理はない。誰もその人に何も言わないから、とんどんと勘違いする。そして、わずかながらの経験で得た基準や教訓などを「唯一」と信じ込む。それらについて上司と話し合う機会がないから、独善的になる。ひとりで仕事をして決断をするから、上司や周囲の社員からは仕事の状況や難易度、問題点がわからない。ある意味で、完全なブラックボックスとなり、ますます、勘違いし、悪循環に陥る。
このタイプは、ひとりで仕事をすることを「自主的」と信じ込んでいる場合すらある。上司やその上の役員らも、部下の育成には熱心とは言い難い。そもそも、熱心ならば、もっと報告を求め、育成をする。
冒頭で紹介した出版社の社員は定着率が高い。労働条件が業界の平均水準をはるかに上回る。一方で、上司に報告せずに、ひとりで判断し、決断し、トラブル続きの編集者が多数いる出版社の定着率は全般的に低い。この中から、管理職や役員が誕生している。
あなたの会社は、どちらだろうか。転職を考えているならば、私は前者の会社に行くべきと強く勧めたい。後者の会社に在籍し、同世代の人と比べて大きく成長していく人を見たことがないからだ。ダメな会社からはダメな社員しか生まれないのかもしれないとさえ私はよく思う。
文/吉田典史