ソフトバンクはグループ内のサービスを活用
法林氏:ソフトバンクはというとシンプルに通信を売っていくんだという感じで。自前のネタは基本的にないと。
石野氏:PayPayとかDiDiとか、ああいうキャリアが関係ないサービスに出資だけして、いい意味で無節操にやっていくのは面白いと思います。
石川氏:宮内さんが。自前でコンテンツはやらないとはっきり言い切っている。はっきりして分かりやすい気がする。
石野氏:ミーハーなソフトバンクっぽい感じがする。
石川氏:ソフトバンクは土管で行くんだと。それにしては頼りない土管だとは思うんですけど。
法林氏:考えによってはアリだよね。同じグループ内にたくさんいろんなサービスがあるわけで、それと適宜紐付けたり、サービスを始めるときはまずソフトバンクから始めたり。
石野氏:すごく合理的だし、メディアにとっても書きやすいというか載りやすい。その辺はうまいなと思いました。WeWorkとか、ちょいちょいメディアで流行っているようなところをつまみ食いしてきて、DiDiモビリティジャパンを作ったり、PayPayをPaytmの技術で作ったりして。ああいうのはメディアに載りやすいし、あらかじめ知名度のあるところを引っ張ってきている。投資事業をうまく組み込んで根付かせているというところはソフトバンクらしいやり方。話題性もありますし、実際、PayPayもインパクトがあった。
法林氏:PayPayはPaytmがあったから3か月でできたと説明していたね。
石野氏:3か月で作ったから、あんなにトラブルが発生したんだ。
法林氏:せっかくフォローしたのに、そこに持っていく(笑)
石川氏:3か月で作ったことは自慢にならない。楽天の8か月でネットワークを作ったのもそうだけどさ。
石野氏:大成功を収めてから言うのだったらいいんですけど、やらかして3か月で作ったというのはネガティブな話題にしかならない(笑)
石川氏:完成形じゃなくて作っている途中だよね。
法林氏:まぁいいんだけど。
石川氏:とはいえ、PayPayはお金が絡みますからね。
石野氏:決済はね。
法林氏:確かにそこはちょっとね。
石川氏:あんなに仕様がコロコロ変わるのもどうかと思う。
石野氏:アプリのデザインとか、最初と全く違いますからね。
楽天のネットワークはどうなるか
房野氏:楽天はどうですか?
石野氏:楽天はまだ携帯電話事業を始めていないので、当然、携帯電話に関するのは楽天モバイル分だけですけれど、今回、会社を再編することを三木谷さんが直接説明して、あと、こんなネットワークを作りますということを決算で言った。
楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 最高執行役員 三木谷 浩史氏
【参考】
第4のキャリア楽天が挑む世界初の試みと乗り越えなければならない課題
第4のキャリア、楽天が基地局の建設をスタート!気になるネットワークは?
石川氏:びっくりしたのが、2月3日の日曜日なんだけど、ようやく電波を吹いて喜んでいる。遅いんじゃないかな。サービス開始8か月前にようやくクラウドベースのネットワークを二子玉川周辺に吹いて喜んでいる。10月に間に合うとは言っているけれど大丈夫かなと。二子玉川ではつながるけれど、多摩川を越えたらダメかも。
法林氏:難しいよね。これはなんともいえないところがある。
石野氏:東名阪以外はローミングだから、そうなんじゃないですか。
石川氏:「東京23区、大阪市、名古屋市を除く全国エリア」がauのローミング。だから、多摩川を越えたらダメなんだ。
石野氏:電波が入らないですよ。
法林氏:じゃあ何、二子玉川にいるとauでつながったり楽天でつながったりするんだ。
石野氏:そういうことですね。
房野氏:ピクトの表示は変わるんですかね。
法林氏:ローミングだから変わるね。そういうことも含めて、ちゃんとローミングはできるのかとか、結構不安。
石川氏:えー……。
法林氏:過去の経験がどれだけ生きるか分からないけれど、イー・モバイルのときもUQのときも、事前にこれだけやって、こうでした、みたいな情報を出していた気がする。8か月前にこの状況はちょっと怖い気がします。
石川氏:実際のサービス開始が10月1日なのか31日なのかは分からないですけど。
法林氏:たぶん、事前予約は9月くらいからやると思いますけど。
房野氏:その頃だとiPhoneとセットで販売とか、あるでしょうか。
法林氏:Appleはどうかな。
石川氏:それがこの間、「楽天新春カンファレンス2019」というものがあったんですよ。楽天にECサイトを出しているところの人が4000人くらい集まるイベントで、三木谷さんが講演したんですけど、そのときに「実は先日、ティム・クックと話をして、ウチはクラウドベースでモバイルのキャリアをやるという話をした」ということを言ったんですよ。ティム・クックと接点があるというところにちょっと驚いた。前の週に世界経済フォーラムのダボス会議があって、ティム・クックと三木谷さんが行っていたらしいです。そのときに、立ち話なのか面会をセッティングしたのか分からないですけど、三木谷さんはティム・クックにキャリアをやるという話をしたと思われるので、そこから何か話がとんとん拍子で進むと面白いかなと。
法林氏:十分ありえるんじゃないかな。今さら楽天だけ売らない状態にすることでAppleにメリットはないもんね。
石野氏:奨励金がなくなって……
法林氏:売ってくれるところが1社でも多い方がいい。
房野氏:“iPhoneで新規契約キャンペーン”みたいなノリですかね。
石川氏:まぁ……けど、ね、端末割引はできないわけで。
石野氏:楽天で売っても同じことなんですけどね。
石川氏:今やっている総務省の施策は楽天潰しでしかない。端末の割引はできないわ、MNPでもキャッシュバックできないわ、そのタイミングで3キャリアから楽天に移行するメリットがない。23区でつながらないケータイなんて誰も使わないでしょ。
法林氏:昔は、エリア的にはマイナスがあっても新規参入であるがゆえのアドバンテージがあった。イー・モバイルはデータ通信量が多かったり、いち早くHSDPAのような速い通信を入れたりできた。楽天にもアドバンテージがあるかもしれないけれど、あの当時と決定的に違うのは周りの環境が違うこと。多少の差はあるけれど、日本には世界最高級品質の通信が3つあるわけですよ。そう考えるとしんどい。いくら「異次元の安定性」とはいっても、電波が来ないことは安定性があるとはいえない。
石野氏:通信障害にしても、あっても年1回じゃないですか。ソフトバンクは年に3回やらかしていますけど。安定性は一般のユーザーに対する売りにはならないと思う。
石川氏:UQ、その前のイー・モバイルはどちらもデータ通信サービスから始まったじゃないですか。つながらなければ窓際に行こうとか、ここでつながらなかったら別のところでやろうとかいう感じでしたけど、楽天は今のところデータ端末で行くとは言っていないので、おそらくスマホで参入してくると思います。それで電話がつながらないのは致命的だと思うんだよね、音声通話は昔ほど使われなくなったとはいえ。
石野氏:(無料通話アプリの)「Viber」を推してくるんですよ。
石川氏:セルラーの電波がなかったらViberも使えない。
石野氏:楽天の資料にWi-Fiとなんとかと書いてあって、Wi-Fi Callingもやるつもりなのかなと。Wi-Fi Callingはモバイルの設備にWi-Fiから直接通して、モバイルのように電話ができる技術なので、できると思うんですよね。
石川氏:iPhone以外にWi-Fi Callingをやっているメーカーってどこだっけ?
石野氏:ファーウェイとかサムスンとか。アメリカだとAndroidも使えるはずです。
房野氏:楽天の料金プランはどうなるでしょうね。100GBプランとか出てくるでしょうか。
石野氏:ソフトバンクが50GBプランを出しているし、使い放題にしないとちょっと厳しいかな。
石川氏:auのネットワークでは使い放題にはならないと思うので、どうするのか。
房野氏:端末はデュアルSIM対応なんでしょうか。
石野氏:eSIMも考えているようなことは聞きました。
石川氏:うーん……
石野氏:そこはね、料金が出てきてから。
石川氏:楽天新春カンファレンスでは、通信料金を下げてお財布に余裕を持たせて、余ったお金を使って楽天で買い物してほしいという言い方をしていた。
法林氏:そりゃあ、その場所ではそう言うだろうね。
石川氏:そう。なので当然安い料金でやってくるだろうなと思います。
石野氏:本当はね、楽天スーパーポイントを楽天に環流させてということで。
石川氏:楽天モバイルがあるからいいじゃんって気がすごくする。
石野氏:そうなんですよね。新たに設備を打つ理由にならない。
石川氏:楽天が採用するといっているクラウドベースの技術って、確かドコモも4年くらい前から取り入れていたりするんですよ。
石野氏:NFV(Network Functions Virtualization)とかですよね。ドコモやソフトバンクも入れていますよね。auもしかり。全部がクラウドベースいう意味で世界初なのかもしれないですけど。5Gレディとも言っていましたけど、それも各社そうだよなと。しかも楽天が持っている周波数は1.7GHz帯なので、5Gレディになっていても周波数は割り当てられていない。
法林氏:結局1波だからね、たくさん周波数を持っている3社には、そんな簡単には勝てないですよ。
石野氏:あとね、発表した内容も横文字が多すぎて、何を言っているのかよく分からない。お前、ルー大柴かっていうくらい横文字だらけ。
法林氏:楽天は公用語が英語だから。
石野氏:英語なら全部英語にしろと。カタカナ語だらけで何を言っているのか分からない。なのに「仮想化」だけ中途半端に漢字にしていたり。
石川氏:ネットワークの裏側がすごいのは分かったから、基地局はどれくらい建つのかというところを説明してほしいなと。
石野氏:そうですね。裏がすごくても結局無線なので、電波がなきゃ意味がないですから。
石川氏:ソフトバンクが基地局なくて散々苦労したんだから。
法林氏:ソフトバンクは900MHz帯を割り当てられるまで、あれだけ苦労したわけなので。コンクリートの柱だけで基地局をなんとかしましょうといっても限度がある。
石野氏:テストユーザーだけだったら安定して稼働しているかもしれないけれど、何千万台とつながって本当に大丈夫か。
石川氏:本当にKDDIと接続できるのかも。
房野氏:そこですか。
法林氏:ローミングは難しいですよ。
石川氏:唯一救いは、4GしかやっていないからVoLTEで運用するので、そこは楽だけど。
法林氏:ローミングのハンドオーバーってできるのかな。
石野氏:一回切るんじゃないですか?
法林氏:普通は切れるよね。
房野氏:ということは、多摩川を渡っている間にプチッと切れるんですか?
法林氏:そのはずだけど。
石野氏:その時点で安定していないよ。
石川氏:サービスが始まったら実験しがいがあるなぁ。
石野氏:発売日にSIMを買いに行こう!
……続く!
次回は、総務省の「モバイル研究会」について話合います。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。