「薬膳」という言葉が広く知られて久しいが、これからは「薬酒」がちょっとした流行になりそうだ。
薬酒とは、生薬(ハーブ)を蒸留酒に漬け込んで、薬効成分を浸出させてできたもの。日本では「薬用養命酒」が有名なくらいで、どちらかと言えば日陰の存在。
これに風穴を開けようとするのが、「薬酒BAR」を創業し、全国26店舗に薬酒専門のバーを展開している桑江夢孝さんだ。
桑江さんが薬酒と出会ったのは、奥さんの病気(脳下垂体腫瘍)を治したいという一心から。現代医学では治療が難しいこの病気をなんとかしようと東奔西走の末、桑江さんは薬酒にたどり着く。そして、薬酒のおかげで奥さんの病気は寛解し、医者には不可能と言われていた子宝にも恵まれるという奇跡を体験する。そればかりか、桑江さんの持病のアレルギーも治ってしまう。
そうしたエピソードの顛末は、12月に刊行された『僕の人生を変えた薬酒の話』(ワニブックス)に詳しいので、ぜひお読みいただければと思うが、いったい「薬酒BAR」とはどんなバーなのだろうか。
百聞は一見に如かず、と世田谷区の三軒茶屋の店を訪れた。
約100種類もの薬酒を展開
三軒茶屋は、13年前に「薬酒BAR」1号店が産声をあげた発祥の地。1号店から徒歩数分のうどん屋の2階に、姉妹店となる「TRADGRAS CAFE × YAKUZEN BAR」が昨年オープンしている。
店のドアを開けると、様々な色の液体の入った瓶がずらりと並んだ棚が目に入る。これらの「ほとんど」が自家製の薬酒で、約100種類あるという。
「全部」でなく「ほとんど」と書いたのは、薬酒以外にノンアルコールのドリンクもあるため。メニューを見ると、数種類のハーブと希少なコロンビア産コーヒー豆(スペシャリティコーヒー)をブレンドした「薬膳ハーブコーヒー」や、ハーブのエキスをビネガーに加えた「ハーブ ビネガー」もある。応対してくれた桑江さんは、「こうした飲み物は、お酒が飲めない人に人気があります」と話す。
とはいえ、主役は薬酒。これだけたくさんあると選ぶのが大変そうだが、1つの目安としてメニューには「Energy」とか「Beauty」といったカテゴリーがあり、カテゴリーごとに何種かの薬酒が掲載されている。例えば、「Beauty」には「ビワの葉」、「アサイー」、「カキの葉」、「ヨクイニン」の薬酒があり、美肌やシワの改善に効果的と、効能も記されている。
いずれも一杯800円で、原酒をジンジャーエールなどで割ったものを飲むかたちになる。