プレイヤーの7割は女性
「性教育ツール」という、非常に困難を抱えそうなテーマの商品であるにもかかわらず、Judieは2018年のリリース以来多くのダウンロード数を稼ぎ、プレイヤーは年々増えている。
2019年1月28日現在、累計85000人のユーザーを数え、アクティブユーザーの割合は女性が70%、男性が30%、各国の割合はタイで32%、アメリカで19%、次いでロシアや南米・エクアドル、アジア圏ではフィリピンが並ぶ。あいにく日本では未発売の商品のため、ユーザー数は0だ。
日本でのアプリ公開に関してKengさんは「実はリリース時に、日本のコンドームメーカーにタイアップをお願いしたが、日本でのスマートフォンはiPhoneのシェア数が圧倒的で、アップストアのアプリで出さないと採算上難しいことがわかって、あいにく断念した」
と話す。
なぜタイでアプリの開発と発売が可能になったと思うか、Kengさんに聞いた。
「性について話すことは、タイでも多くの家族にとって簡単なことではない。親が子どもの一番の理解者ではないかもしれない。Opendreamは、これまで、ゲームやソーシャルメディアなどの最新のテクノロジーを通じて、知識をコミュニケーションにつなげるという概念を生み出してきた。それを性教育アプリに応用しただけのこと。学校で教えてくれないことをどこで知ろうとするか?それはもちろんインターネットだ。我々はその情報空間をしっかりと埋めるために、ゲーム「Judie」と質問できるコミュニティサイト「sex safe safe」という情報ツールを用意した」と話す。
タイには男尊女卑が根強く、女性は男性に服従しなければならないという文化が色濃く残っている。そういった家庭で育つ子どもも少なくないのだ。とにかく女性の自己決定や自分の意思を尊重するということに関して、課題を抱えているという。
Kengさんは「大切なのは、セクシャリティーのことだけではなく、とにかくどんなことでも主体的に<女性が選択できる>自由な態度でいていいんだ、ということをしっかり体験できること。それはゲームを通じてだれでも理解できる、シンプルなことだ。<こうなったら、こうなる、では自分は何を選ぶか?>主体的に考えることを促すストーリー設計だからこそ、たとえテーマが性教育であっても、こうして需要が生まれている」と話す。
確かに、Judieのゲームは、必ずしも100%安心で安全なセックスの啓蒙に焦点を当てていない。ゲームを進めていくと、途中避妊用のピルが出てくるシーンもあるし、コンドームの性質が劣っているように見て取れるキャラクターも出てくる。
これは、危険な状況が起こりそうな時、交渉スキルを身につけることこそ重要であるという「コミュニケーションの重要性をプロダクトに反映する」Opendreamの思想に基づき設計がされているからなのだ。
発売以来、「Judie」のコミュニケーションサイト「Sex Safe Safe」には質問や意見がたくさん寄せられているという。「Judie」の新シリーズの制作に活かされているほか、現在、実際学校で使われているJudieの副読本ともいえる性教育の真面目な冊子を作る際にも、コミュニティの情報が反映されているという。
同冊子はフェイスブック経由で閲覧することができる。確かに、セックスにまつわる女性の意思決定に関して、戸惑いが生じる部分に特にフォーカスされて編集されており、女子である筆者が読んでも大変好印象だ。Judieで遊ぶことのできない日本の読者はぜひ、この冊子のそれぞれのページを是非ご覧いただきたい。Opendreamの思想がギュッと詰まったとても素敵なであることは、間違いない。Opendreamのフェイスブック、Judieのコミュニティーサイト「sex safe safe」(88,900人がフォロー中)から閲覧できる。
https://www.facebook.com/safesexnaja/