今、車内で食を楽しむことができる列車が日本各地で走行している。それぞれ、趣向を凝らしたメニューや演出が注目を集める中、日本で唯一の本格的な「スイーツのフルコース」を楽しむことができるのがJR九州の「或る列車」だ。この列車はシーズンによって大分、長崎エリアを走行し、黄金に輝く列車の中で至高のスイーツコースを楽しむことができる。ただ、この「或る列車」。ただ豪華絢爛な列車というだけではない。実はこの列車に欠かすことのできないある方々たちに大きくフォーカスされた列車なのだ。
1月から5月までの長崎コース
今回乗車したのは2019年1月から5月の運行が予定されている長崎コース。佐世保と長崎の間を走行し、午前便は長崎行き、午後便が佐世保行きとなる。長崎コースの醍醐味はなんといっても大村湾沿いを走るその絶景風景! そのため、予約時には海側の座席をぜひ狙いたい。今回は午後便に乗車し、一路佐世保を目指す。なお、午前午後共にメニューはいっしょだ。また4月からの運行便は運行時間が少し変更になり、午前便はランチタイム、午後便は少し早めのディナータイムにシフトし、より利用がしやすくなる。
「ようこそ」と客室乗務員さんとレッドカーペットがゲストをお出迎え
午後2時過ぎ、長崎駅にピカピカの「或る列車」が入線し、ホームにはレッドカーペットが敷かれていた。以前、大分ルートに乗車したことがあり、(その時の記事はこちら)今回は大分コースとの違いも楽しみにしていた。「或る列車」は2両編成で1号車は2人用、4人用の座席で構成されたオープンダイニングタイプのレイアウト。ロマンチックな色・クラシカルな形、メープル材を使用した木のぬくもりあふれる空間だ。一方、2号車はコンパートメントで構成され、1名もしくは2名で利用できる落ち着いたプライベート空間が魅力。ウォールナットの組子がいたるところに施され、そのきめ細やかな仕事と伝統芸能を堪能しながら旅をすることができる。
2号車は重厚な雰囲気のコンパートメントが並ぶ
今回はこちらに乗車した
今回アサインされたのは2号車の海側のコンパートメント。前回の大分コースでは1号車だったので、これまた違いを楽しむには最高の条件! 15時前、長崎駅の駅員の皆さんにお見送りされながら佐世保駅に出発。JR九州の列車に乗ると、いろいろな方たちが列車に手を振ってくれる光景を目にする。車体や料理といったハードだけでなく、こうした「ソフト」面のおもてなしが実はJR九州の列車旅の醍醐味だったりする。最近では他の鉄道会社でもこのような光景が見られてとても楽しいが、JR九州はこれをもうずいぶん前から実施しており、社員はもとより、沿線の住民、自治体などにも浸透している度合が圧倒的に深く、乗る度に発見や温かい気持ちになる。
明治時代の車両がモチーフに
「或る列車」のデザインコンセプトは明治時代、当時の「九州鉄道」が発注した列車がモデル。当時のこの列車は残念ながら活躍する機会に恵まれなかったものの、今こうして九州の鉄路を駆け抜けている。世界的な鉄道模型の神様といわれた故 原 信太郎氏が作成した「或る列車」の模型を元に、現在「原鉄道模型博物館」の副館長である原健人氏の協力のもと、JR九州の列車群のデザインを担当する水戸岡鋭治氏とドーンデザイン研究所が設計した。