ミレニアル世代にとって緑茶飲料は、自分たちの飲み物ではない?
誕生までに要した期間は構想を含めて1年ほど。通常の緑茶飲料は半年ほどなので、実に2倍もかかっている。
これほどまでに手間ひまかけて開発したのは、品質をおろそかにすることができないためである。当然と言えば当然だが、理由はミレニアル世代を意識した商品をつくることの難しさを感じたからであった。倉持氏は次のように話す。
「ミレニアル世代向けの商品をつくるに当たり難しいと感じたことの1つに、飽きるのが早いのではないか、ということがありました。話題のものにすぐ飛びつく一方で、離れるのも早い。インパクトは大切ですが、品質を高めて美味しいものにしなければリピートしてもらえません。ずっと飲み続けてもらえるよう、中身づくりには徹底してこだわりました」
緑茶の専門家の中には、ミレニアル世代の人たちにとって緑茶飲料は「自分たちの飲み物ではない」と認識している人がいるのでは? と分析する人がいるほど。「自分の飲むものではない」と判断されかねなかったことから、社内では緑茶飲料として発売するか、それとも別のカテゴリーの飲料として発売するかで議論になった。倉持氏はこう続ける。
「緑茶飲料として発売すると、苦味・渋味のあるものとして捉えられてしまう恐れがありました。とはいえ、これは純粋な緑茶飲料。新しい味わいの緑茶飲料として広め知ってもらうしかありません。サンプリングやキャンペーンで認知を拡大していくことにしました」
カバンから飛び出ない背の低いボトルを開発した理由
また、中身だけでなくサイズなども従来の『お〜いお茶』から変え、ミレニアル世代の嗜好に合わせた。
何よりも目を引くのが、やや低めで細身の470ml入りペットボトルを採用したこと。倉持氏は次のように話す。
「仕事をしていたり外出する機会の多いミレニアル世代の女性の中には、飲料を何かしら持ち歩いている人が多いことが、アンケート調査などからわかりました。ふとした瞬間にひと口飲んで、口の中を潤したり気持ちを整えています。一方で、若い女性が使いそうなカバンを調べたところ、高さがA4用紙をヨコ置きした程度のものが多いことがわかりました。この程度の高さだと、緑茶飲料などで一般的な525ml入りペットボトルは飛び出してしまいます。横にするとこぼれてしまう恐れがあるので、それもなかなかできません。そこでボトルの高さを、A4用紙をヨコ置きしたときより低いものにすることにしました」
ボトルの太さについても、太すぎて「持ち歩きたくない」と思われないようにすることを心がけた。高さを抑え女性の手でも持ちやすい幅でつくった結果が、現在のボトルである。
商品名を白文字で示したパッケージデザインも特徴的だ。これは、黒っぽい色だと主張が強く、女性に中にはストレスを感じる人もいるため。「商品名は見えないぐらいの方がいい」という意見も多かったという。
白色だと見づらそうに見えるが、光が当たると見やすくなるとのこと。透明感がある新緑の緑に白文字は、ユーザーにストレスを与えないと同時に、店頭での訴求力アップという効果があった。
ミレニアル世代の女性にマッチした「ストレスフリーになれる緑茶飲料」というコンセプト
発売から約3週間で販売数量が1000万本を突破するほど爆発的に売れた『お〜いお茶 新緑』だが、テレビCMの放映以外では、発売前にTwitterなどSNSを活用したプレゼントキャンペーンに取り組んだ程度。この他には7月、8月、10月に、購入者にLINEポイントを付与するキャンペーンを実施した程度だ。どれも特段珍しいものではないが、LINEのメインユーザーと『お〜いお茶 新緑』のターゲットが年齢的に合致していた。
発売後に実施したユーザー調査で飲用シーンを問うたところ、「リフレッシュしたいとき」という回答が多いのが目立つ結果になった。「ストレスフリーになれる緑茶飲料」という狙いはミレニアル世代の女性にマッチした。
『お〜いお茶 新緑』は他の緑茶飲料に比べて、リフレッシュしたいときに飲む傾向が顕著に強い。「ストレスフリーになれる緑茶飲料」という狙いが、ターゲットとしたミレニアル世代の女性にマッチした
『お〜いお茶 新緑』は、緑茶が「苦手」で「自分たちが飲むものではない」という認識だった多くのミレニアル世代の女性を、振り向かせた。今春から放映予定の新しいテレビCMでは、SNSとの連動も視野に入れているという。どうすれば若い女性の生活に溶け込み定着できるかを、現在模索中とのことだ。
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取材・文/大沢裕司