ネットで『ルンバ』に乗る猫を見た時、クレイジーと思いました(笑)
前編はコチラ
日本の消費者が満足すれば世界で通用する
――そして2002年、ついにロボット掃除機『ルンバ』が発売されますが、なぜ数ある選択肢から掃除機を選んだのでしょうか?
「掃除機をかけるという作業は頻繁にやらなくてはいけないですよね? でも誰もが好きな仕事ではありません。しかもホウキやモップなど、ほかの掃除用品に比べると掃除機は値段が高い。そうした点から、掃除機というのはバリューが高く、好機があるのではないかと考えたのです。それにニーズがあることもわかっていました。というのは、周りの人から『ロボットの研究をしているそうだけど、ロボットが掃除してくれる日はいつくるの?』という質問がよくあったからです(笑)」
――当時、市場にほぼないに等しかった製品ですが、世間にすぐに受け入れられましたか?
「最初に『ルンバ』を作った時、取締役会は製品としてはおもしろいと言ってくれたのですが、非常に懐疑的だったので、生産台数は1万台に設定されました。ところが実際に販売開始したところ大ヒット。供給が間に合わず、製品を作っていた中国から空輸したほどでした。小売店からかかってきた注文の電話をよく覚えていますよ。私がバイヤーに『売れてる?』と聞いたら、『結構売れているから、再注文したいんだけど』と言われたんです。それで『何台欲しいの?』と尋ねたら『何台なら作れる?』と(笑)。『ルンバ』は最初の3か月で7万台も売れました」
――翌年の2003年にはスポットクリーニングモードを採用した『ルンバ プロ』を発売しましたね。
「2年目は30万台くらい売れるだろうとチャレンジしたのですが……年度末になっても生産した30万台のうち、25万台が倉庫に眠っていた状態で、危うく破産しかけました(笑)。しかし突然売れ始めたんです。当初は、その理由がわからなかったのですが、アメリカの有名なコメディアンが出演していたペプシコーラのCMに『ルンバ』が出ていたんです。この放送をきっかけに、倉庫の『ルンバ』はすべて売れました。アイロボットは研究開発が中心のエンジニアリング企業なので、広告宣伝がうまくできなかったんですね。そのことを反省し、翌年からはマーケティングや広告宣伝にも投資をして、状況は改善しました」
地球外探査用ロボットがアイロボットの第1号機
初のロボット「ジンギス」は、現在アイロボット本社とスミソニアン航空宇宙博物館に展示されている。ソニーの犬型ロボット『AIBO』にインスピレーションを与えたという。
性能に加え、コスパも高め始めた最新モデル
現在、発売中の人気モデル。右は拭き掃除を自動で行なう『ブラーバ』、左は2018年秋に発売されたばかりながらも、低価格でいて高性能の『ルンバe5』。ちなみに『ブラーバ ジェット』の英語表記は『Braava』。『Roomba』と同じく、母音が2つ重なる綴りになるようにしたという。