人手不足をどう埋めるか
出典:パーソル総合研究所×中央大学「労働市場の未来推計2030」より
この2030年に不足するとみられる644万人。どう埋めるかを考えた際に、パーソル総合研究所と中央大学の「労働市場の未来推計2030」では、1.女性、2.シニア、3.外国人それぞれの働き手を増やすことと、4.生産性向上の4つの対策を挙げる。
また提言として、国や企業はこれまで以上に賃上げの努力をすべきであることや、市場が求めるスキルと労働者が持つスキルの間の乖離の懸念から、労働者が継続的な能力開発によってスキルを身につけ、国や企業も適切にそれを支援すべきであること、シニアや女性就労のためにも、国や企業は介護をしながら働くことが可能な社会を作っていくべきであること、外国人が働きやすい国となるべく、並行して労働条件の改善を行っていくべきであることを挙げた。
AIによる生産性向上の効果
生産性向上については、AIの活用が想定される。2030年時点でAIによる生産性向上の効果はどのくらいなのか。またAIは何万人分を代替するのか。株式会社パーソル総合研究所の島林秀行さんは次のように解説する。
「2030年時点の644万人の人手不足のうち、女性・シニア・外国人の活躍により346万人分を補える可能性があり、残りは298万人分の人手不足となります。OECDの調査に基づいて計算すると、AI等の技術革新により、この298万人分をカバーできる可能性があります」
出典:パーソル総合研究所×中央大学「労働市場の未来推計2030」より
「女性・シニア・外国人を除いた残りの298万人分の人手不足を解消するには、2030年の労働需要7073万人に対して、4.2%の生産性向上が必要となります。
OECDが2016年に発表した調査によると、自動化可能性が70%を超える労働者の割合は、日本において7%という結果となりました。自動化が2030年まで十分進むと仮定するとこのOECDの調査結果から4.9%の工数が削減できると考えられるため、4.2%の生産性向上が求められる298万人分の労働需要をカバーすることは可能と考えます」
生産性向上については、AIによる代替えが有効であると見込まれている。あとは、女性、シニア、外国人が働きやすい環境づくり、サポートが重要になっていきそうだ。
これらの結果を踏まえて、企業はどのように人材を確保していく必要があるだろうか。島林さんは次のように話す。
「人手不足を即座に解消することはむずかしいものです。その意味でAI・ロボットなどによる生産性向上、女性・シニア・外国人の活躍など、総合的な取り組みが必要だと考えます。また、そうした取り組みにおいては、産業別・職業別にみたときに特に不足している部分を埋めるべく、特定の専門性を持った方をはじめとしたさまざまなタイプの人材を確保することも求められます」
【取材協力】
株式会社パーソル総合研究所 島林秀行広報室長。富山県出身。早稲田大学フランス文学専修を卒業した後、日本新聞協会、三菱UFJリサーチ&コンサルティングを経て、2018年3月より現職。
「労働市場の未来推計2030」
https://rc.persol-group.co.jp/news/files/future_population_2030_2.pdf
取材・文/石原亜香利