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なぜ中小企業では仕事量に大きな個人差が生じるのか?

2018.12.25

■連載/あるあるビジネス処方箋

 小さな会社(この場合は、正社員数100人以下)を取材すると、社長などが「うちの会社には大量に仕事をする社員がいる」と話すことが多い。聞く限りでは、ほかの社員の1,5~2倍ほどの量をこなす人もいるようだ。労働時間では、毎月50時間を軽く超えている場合もあるという。本来は、何らかの歯止めをかけるべきなのだが、私がこういう会社を観察をしていると、なかなかできていない。むしろ、野放しになっていることのほうが多い。

 今回は、小さな会社で大量の仕事をする社員がいる理由を私の取材経験で知り得たことをもとに考えたい。

各々がバラバラ

 小さな会社では新卒採用よりは中途採用に重きを置いているために、全社員に占める中途採用者の比率が高い。7~9割になっている場合がごく一般的である。それぞれの社員のバックグランド(学歴や職歴など)が多種多様になりがちになる。本来、ここで情報共有の徹底をしたり、社員教育の研修などをしつこいほどに繰り返すべきなのだが、多くの小さな会社ではそれらが十分にはできていない。一方で、社員の定着率が大企業に比べると概して低い。つまり、社員の出入りが相当に激しいために社員間の情報や意識、目標の共有が難しいのだ。

 管理職や役員は、こういう社員の中から比較的、容易に昇格するために「社員間で共有する」という意識が希薄な傾向がある。そもそも、共有するべきと考えてはいない人もいる。しかも、管理職になった後、マネジメントなどの研修を受けることがあまりない。したがって、部下がバラバラな行動や価値観、仕事の進め方をしていても、特に叱ることもなく、注意をすることもしない。危機感も感じない。結果として、社員の多くは自分のことにしか関心がない「我関せず」という姿勢になりがちになる。

 このような風土の中では、まじめに仕事をするほどに報われない。たとえば、ほかの社員より多くの仕事に取り組んだところで、それが上司や周囲の社員には正確になかなか伝わらない。人事評価で高く評価されない場合も多々ある。そもそも、人事評価をする上司は部下が何をしているのかを正しく判断できていない。企業内労働組合もないから、そんな管理職でもさほど問題視されない。部下がそのようなことに不満を持ちながらも、責任感を持ち、黙々と仕事をすると、雪だるま式にどんどんと仕事が増える。

自由気ままにできる

 こういう会社で働くと、ある意味でやりがいを感じる。社員の意識やスキル、技能は大企業に比べると概して低い傾向がある。しかも、定着率が低いがゆえにライバルが少ない。大企業の同世代の社員と比べると、早くから権限が与えられ、仕事の量は多く、うまくいけばおもしろさを感じる機会が増えることもある。

 1つずつの仕事の成果や実績、それらを導くプロセスについて上司からの厳しい指導もあまりない。上司は指導をしようともしても、部下が何をしているのか判断できない。結果として、部下は自分のペースや考え方などでできることが多い。仕事の失敗やミスなどについて嘘もつくことが十分できる。ある意味で、自由気ままにできる。怖いものがない。そこでますます、仕事にはまり、量が増えることがある。

 個々がバラバラな行動をとると、得てしてこのような状況が生まれやすい。社内はもはや、バラバラになっているから、本人はますますはまり、仕事の量が増える。もう、誰も止められない。

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