『ガリガリ君 リッチ』の定番商品を生みたい
こうして説明をしていると、『ガリガリ君』には多くの種類があると、おわかりいただけるでしょう。定番のソーダ味、果汁がたっぷり入った『大人なガリガリ君』、リッチタイプは文字通りミルクや練乳、クッキー等が入った豪華なガリガリ君です。2012年に発売され話題になったコーンポタージュ味もリッチタイプです。
「『ガリガリ君リッチうなぎ味』はどうでしょう」と僕も提案したのですが、「戦略的に今じゃないね」と上司に反対されました。シーフードヌードルにミルクを入れると美味しい。「『ガリガリ君リッチシーフードヌードル味』というのはどうでしょう」という提案も、上司の了解がとれず。
リッチのジャンルはコーンポタージュ味とかナポリタン味とか、奇抜なフレーバーの印象しかなくて。僕はそれが悔しかった。美味しいと誰もが認める、みんなに愛されるガリガリ君リッチの代表的な定番商品を生み出したかったし、上司も同じ思いだったと思います。
チョコミントの成功で味をしめたわけではありませんが、チョコだったらリッチの定番として、みんなが手に取ってくれるのではないか。「お前がやりたいようにやれよ」と、開発部署の先輩の言葉もあって、異動になる前、この夏に販売した新商品が、『ガリガリ君リッチ チョコチョコチョコチップ』。名前の通り外側も中身も、チョコがいっぱい入っている。リッチの定番はチョコという路線を打ち出したかったんです。
『ガリガリ君リッチ チョコチョコチョコチップ』は、バカ売れしたというわけではありません。でもリッチのカテゴリーの定番は、チョコという流れを作れたのではないかと密かに思っています。
昨年の冬に、『大人なガリガリ君 みかん』の開発に取り組んだ時は、果汁をどのくらい入れるかが難しくて。原料メーカーのみかん汁はフレッシュなものから、甘みが強い完熟まであります。「どれにしましょうかね」と、僕はつい先輩に聞いてしまった。すると、「まず、自分で決められるようにならないとダメだよ」と。まず自分の考えを述べないと、次に進んでいけないし、学ぶことができないという先輩のアドバイスでした。
ガリガリ君は繊細で微妙な味が表現できます。だから、普段の生活でも何かを食べた時に何が入っているのか、気づくことが大切で。自分で味について語れるように、舌は鍛えました。特に僕は甘いものが好きなので、会社に入ってこの2年半で、10㎏太った(笑)
何にでも美味しい食べ方があります。ガリガリ君は、冷たすぎると本来の味の感覚を逸することがある。季節にもよりますが5分程度、常温で置いて溶ける少し前ぐらいになったガリガリ君を、こうガブッと。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama