■連載/あるあるビジネス処方箋
私は、50歳になった。社会人になり、27年間が過ぎた。この間、主に取材をして記事を書く仕事をしてきたが、最近つくづくと実感することがある。それは、「軌道から外れる人は、外れるべくして外れている」ということだ。会社員でいえば、40~50歳で管理職になることができない人や、課長や部長になったとしても、役員になることができない人たちだ。この人たちは私と同世代ということもあり、私からすると実によく見える。能力や適性、実績などのほか、定年(60歳)まで社内でどのような扱いを受けるかなどがリアルに想像できる。なぜ、軌道から外れたのかも、私なりにわかる。
今回は、40~50代でいわゆる「出世」の軌道から外れる人の特徴を私の取材経験をもとに取り上げたい。
1、「処理能力」や「理解力」が低い
最も目立つ特徴が、この連載「あるあるビジネス処方箋」で何度か取り上げてきた「処理能力」が低いことである。通常は「話す力」「聞く力」「書く力」などをベースに「理解力」となり、理解力が高いと、上司をはじめ、周囲の社員や取引先や販売先、お客さんやクライアントの話を時間内に正確に把握することができる。確実に理解することができるから、一定のレベルを超えた回答や何らかのアウトプットをすることができる。上司や周囲の社員、取引先や販売先、お客さんから「この人はわかっているな」と思われ、しだいに信用される。この繰り返しで「信用」が「信頼」となり、評価や価値が高くなっていく。
私が見てきた軌道から外れる人のほぼ全員が、「処理能力」や「理解力」が著しく低い。たとえば、今春、全国紙が発売する雑誌で記事を書いた。担当者とのメールのやりとりは、仕事を完了するまでに10回前後で終わった。担当者は「処理能力」や「理解力」が高かった。同時期に仕事をした中堅出版社(社員数350人ほど)の編集者は、年齢はおそらく全国紙の担当者と同じくらいなのだが、仕事の力は天と地の差だった。特に「処理能力」や「理解力」が低い。完了するまでにメールのやりとりは、60回を超える。1つずつのメールの意味がわからないために、こちらはほぼ毎回、返信をしなければいけなかった。電話のやりとりでも、同じようなことが続く。しかも、理解力が半端じゃなく低いがゆえに「そんな話は聞いていない」と何度も私に言ってくる。こちらはメールでも電話でも伝えてあるのだが、それも理解できていないようだった。率直なところ、仕事の最後のほうでは私は疲れ切ってしまい、精神がもうもたない、と思った。
全国紙の雑誌の担当編集者は管理職であったが、中堅出版社の編集者は40歳を超えても非管理職で、軌道から外れていることはほぼ間違いなかった。ここまで理解力や処理能力が低いと、社長や役員も安心して大きな仕事をまかせたり、ポジションを与えることはできないはずだ。