私が会社員の頃、職場に「カタツムリ」と影口を叩かれる、30歳前後の男性社員がいた。
仕事を消化するスピードが、極端に遅かったため、そう呼ばれていた。私がこの20年ほどで接してきた会社員の中でも、彼の場合、群を抜いて仕事のスピードが遅かったように思う。ただ、彼がなぜ仕事が遅いのか、観察していると気づくことがあった。彼のように仕事が遅い人にはいくつかの特徴があるのだ。ただし、誰もがゆっくり仕事をしたくて、しているわけではない。その人たちは、次に挙げた5つの、いずれかに該当している可能性があるように思う。
1. 周りのプレッシャーを感じにくい
仕事が遅い人があらゆることにスローテンポなのかといえば、そうではない。私が30歳の頃、同じ部署にいた、30歳前後の「カタツムリみたいな人」は昼食を一緒に食べる時も、とても速かった。よく男性5~6人で店に行っていたが、食べ終わるのは常に彼がトップだった。きっと空腹だったのだろう。店は、ランチの時間帯でお客が多かった。その場に長居できない雰囲気だった。彼は、そのような切羽詰まったものを感じ取っていたのかもしれない。
これは、仕事においても同じこと。上司などから繰り返し催促され、時には叱られたりすると、「カタツムリみたいな人」も少しはテンポが速くなっていった。彼は、特定の仕事に限っていうと、速く対処することができるようになっていた。ただし、その特定の仕事とは、20代前半の新入社員でも対応できるものだった。
2.仕事の全体像が見えていない
「仕事が遅い人は、完璧主義」と指摘する人がいる。もちろん、それが理由で遅くなってしまう人もいるだろう。ただ「カタツムリみたいな人」はそれ以前のところでつまずいていたことのほうが多かった。ここでいう完璧主義とは、その仕事を隅々まで丁寧に、ハイレベルにこなすことであって、もしそういう性格だとしたら、前提として仕事の全体像や細部まである程度、把握しているはずだ。
しかし、それが把握できていないとしたら? そもそも、仕事の全体像とそれぞれの細部の違いすら、正確に理解していないため、スピード感を持って処理しようとしても、何をどのように、進めればいいのか、わからないはずだ。つまりは、何もわかっていないことになる。