3.もし「解雇」だったら
解雇ならば、3種類のうち、いずれかであるのか。そもそも、なぜ、解雇になるのか。これらを「解雇通知」に書くことを人事部に求めよう。通常は、人事部が解雇通知に書くべきものである。当然、解雇になった日付、さらに社印などもあるべきである。その上で、あなたが解雇を受け入れるならば、そのまま辞めるしかない。解雇通知を持って、最寄りのハローワークなどに出向き、手続きを取ると、一定の期間の後で失業給付を受けることができる。
もし、解雇の理由に納得がいかないなら、弁護士や労働組合ユニオンなどのもとへ相談に行くことを考えてもよいだろう。ただし、その場合、弁護士や労働組合ユニオンは会社と法的に争うことを「仕事」とする。従って、あなたに会社と闘うことを促そうとする可能性がある。会社と争うと、一定のお金や精神的なエネルギー、さらに時間などが消えていく。再就職するにあたり、悪影響を及ぼすこともありうる。そのあたりまで含め、慎重に、冷静に、広く考えるべきだ。
4.もし「退職勧奨」だったら
退職勧奨を受けたとして、会社に残りたいのなら、「私は辞めません」とはっきりと答えること。意思を伝えないと、会社は「もしかしたら、この社員は辞めるかもしれない」と判断し、繰り返し、面談などを求めてくる可能性がある。繰り返し、「辞めたほうがいい」と言われる。そのような面談を受けることを断るならば「私はこのまま会社に残り、貢献してまいります。退職勧奨は、今後、受けません」と書いた文書を直接、人事部などに渡したほうがいい。その際、印鑑をつけて、日付を書き込むことを忘れないようにしたい。水掛け論を防ぐためにも、双方のやりとりはICレコーダーなどに録音しておいたほうがいい。
5.専門家に相談をする
解雇にしろ、退職勧奨にしろ、退職強要にしろ、1人の会社員ではなかなか解決できないものだ。私がこの10数年、取材してきた限りでいえば、そのまま放置してすんなりと解決した話は一度も聞いたことがない。辞めるにしろ、残るにしろ、やはり、この問題に詳しい人に相談をしたほうがいい。会社員の立場からすると、役員や人事部から「辞めろ!」と言われていることを、他人に相談することは恥ずかしいと思うかもしれない。少なくとも、自信を持って口にできることではないだろう。しかし、自分が納得のいく判断をしないと、たとえ辞めるにしろ、心の傷として長い間、残ることがある。
労働問題に精通している「労働弁護団」の弁護士や労働組合ユニオン、各都道府県の労政事務所、全国の労働基準監督署、労働局雇用均等室などに相談をすると、いいだろう。複数の人と会って話をして、助言をもらうと、今後の対策がより具体的に見えてくるからだ。
「辞めろ!」と言われて、売り言葉に買い言葉になり、激しい口論をすることは避けるべき。感情論からは、何も生まれない。常に冷静に考え、対処していくことが大切だ。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。著書に「封印された震災死」(世界文化社)、「震災死」「あの日、負け組社員になった…」(ダイヤモンド社)、「非正社員から正社員になる!」(光文社)など、多数。
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