もし、上司から「もう、お前、この会社を辞めろ!」と言われたら、どうするか。多くの人は考え込んでしまうだろう。落ち込んでしまい、出社することが嫌になり、本当に辞めてしまう人もいるかもしれない。だが、それでは次の職場に行ったとしても心の傷となって残ってしまうだろう。そこで今回は、上司から「辞めろ!」と言われた時に考えるべきことを参考として、5つ挙げてみた。安易にそのまま辞めるのではなく、どうしたら納得できる判断をすることができるか、焦点を合わせてみた。
1.会社の意思なのか、それとも個人の意思なのか
上司が課長や部長といった管理職が「辞めろ!」と言ったならば、それは法律上、「会社の意思」といえる。しかし、上司が本当に役員や人事部などの了解をとった上で「辞めろ!」と言ったのかはわからない。もしかすると、部下に仕事のミスがあり、怒りのあまり、つい口にしてしまった言葉かもしれない。だとしたら、部下としてこう切り返したい。
「それは会社の意思ですか。それとも、部長おひとりの考えですか」
あくまで冷静に、慎重な物言いをしよう。すると、上司は何らかの回答をするはずだ。その回答は、記録をしておく必要がある。何も記録をしないと、後々、人事部などと話し合う時に「言った、言わない」といった水掛け論になる。実際に、リストラの現場では、この水掛け論が多い。
ただし、小さな会社の場合は、社長から直接「辞めろ!」と言われる可能性がある。その際は「会社の意思」と受け止めていい。大企業ならば、さすがに社長が社員の前に現われ、言うことはないだろう。いずれにしろ、確認することにはためらいがあるだろうが、会社の意思であるのか、個人的な考えなのかを上司にきちんと確認しておくべきだ。
仮に管理職である上司個人の考えならば、それを受け入れて辞める必要はない。管理職に部下を辞めさせる権限は、通常、与えられていないからだ。管理職は、役員や人事部などの了解を取るべきであり、ひとりの一存で部下の雇用を奪うことはできない。部下としては「辞めろ!」と言われたら、「辞めません」と答え、毎日出社をしていればいい。
2.解雇か、それとも退職勧奨か
次に聞き出したいことは「これは解雇であるのか、それとも退職勧奨であるのか」ということ。解雇と退職勧奨は、意味合いが大きく異なる。このあたりを正しく理解していないと、大きなトラブルにつながる。解雇には「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」といった3種類がある。それぞれの詳細についてはここでは省略するが、解雇とは会社の側が労働契約を一方的に解除することである。つまり、会社員がそこに残りたいと思ったところで、それとは無関係に粛々と離職の手続きをする。
一方、退職勧奨は、会社がその社員に退職を勧めること。例えば、人事部などが本人に「このまま、残っていても活躍できる場はないから、お辞めになられたらいかがですか」と促す。このいずれかであるのかが、わからないと、対策が取れない。ちなみに、退職強要とは退職勧奨がエスカレートしたもの。例えば、社員が「辞めない」と言っているにも関わらず、「辞めろ!」と繰り返し言うことや、仕事を取り上げ、精神的に滅入らせ、辞めるように仕向けることなど。これは、民法の損害賠償の請求対象行為であり、いわゆる不当な行為と呼ばれるもの。社会常識をわきまえているならば、避けるべきことだ。