3.上司や周囲の社員から信頼されていない
ではなぜ、取引先は自分を飛び越えて上司と話をするのか。それは、担当者を仕事の能力という点で信用していないか、あるいは、必要以上に自社もしくは担当者として自分をアピールしたいからだ。ベテランの取引先担当者は通常、担当者が職場の上司や同僚から信用され、良好な関係を作っているかを観察している。例えば、上司などから「未熟だ」「まだまだ一人前じゃない」という評価をされているようなら、その担当者と深い関係を築いてもマイナスになるのではないか、トラブルが起こるのではないか、と判断する。自分までもが「未熟」「トラブルが起きそう」だと思われたくないと考えるのだ。取引関係を切られたら、当然、大きな損害になる。ゆえに、心配になって飛び越えてしまうのだ。感のいい上司ならその関係性を察知して、それでもあえて現場担当者に任せようとするものだが、そこまで気が回る、デキる上司は少ない。
4.上司が“仕切りたがり屋”の場合
担当者の上司が仕事の隅々まで仕切らないと気がすまないタイプである場合も、取引先が飛び越えて話をしてしまうことがある。頼りない担当者と話を詰めるより、上司と話し合い、進めたほうがいいと判断するものだ。本来は、このようなあり方は好ましくはないが、現実にはある話だ。この状態が続く限り、なかなか、取引先と信頼関係を築くことは難しいし、自分のスキルもあがらない。その場合は、様子をみて上司ときちんと話し合いをすべきであり、取引先に自分のことを信頼してもらうための努力を重ねることが必要だ。いずれの場合も“コミュニケーション”がカギになる。
5.反省しない
取引先から飛び越えられた時、まずは何が原因なのかを考え、反省する必要がある。「自分の力量が低いから、信用されていないのではないか」「取引先を押さえつけようとしたから、反発を招いたのではないだろうか」などと、振り返ってみるべきだ。意外と取引先を批判はするものの、自分を省みることが少ない。だからこそ、取引先や職場の同僚、上司などから一段と反感を買ったり、不信感を持たれてしまうのだ。
仕事の取引で問題が生じる場合、大体は双方に問題がある。「常に自分が正しく、常に相手が悪い」ことはありえない。取引先にも確かに非があるかもしれないが、担当者にも非があるはずだ。まずはそれを自覚して、問題点を改善しようとしないと、取引先との関係はいつまでもよくならないだろう。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。著書に「封印された震災死」(世界文化社)、「震災死」「あの日、負け組社員になった…」(ダイヤモンド社)、「非正社員から正社員になる!」(光文社)、「悶える職場?あなたの職場に潜む「狂気」を抉る」(光文社)など、多数。