3.自分なりの仕組みや仕掛けを作る
「1」や「2」を実践すると、目の前の仕事を効率よく進めるために、何かしらの仕掛けや仕組みを作る必要があることに気づくだろう。例えば、営業の仕事でいうと、契約の見込みの可能性が低い会社への訪問はペースを減らし、しばらくは、メールなどで情報を定期的に送るようにしてみる。そこで反応があり、質問があった会社には出向くようにするなど、時には“効率化”も必要だ。
これが当たりまえのようで、実際にはきちんと実践できていない人がいる。得てして、「忙しくて、時間がない」と嘆く人ほど、そういうタイプが多い。目の前の仕事に集中しすぎるあまり、広い視野で全体を見ることができなくなっているケースが多いのだ。さらには、半年後、1年後、3年後と、長いスパンでとらえることもできていない。いったん仕事を休止して、これからどうするべきか、現状をどう改善するべきか、考える時間を設け、対策を練らないと、忙しさはエスカレートするだけだ。仕事や職場の仕組みが自然とよくなっていくなどということは、ほとんどありえないということを心得ておきたい。
4.長期的な視点で考える癖を身につける
仕掛けや仕組みを作る時は、数か月後、数年後のことまで考えたい。そのように意識するだけでも、新しい仕組みや仕掛けを作ろうとする意欲が湧いてくるものだ。大切なことは、目の前の仕事を消化することにだけ、目を奪われないこと。数年先までを念頭に考えると、自然と「この仕事は重要ではない」「この仕事のここは注力すべきでない」などと、自分の中で整理ができるようになるはずだ。このように、抱えている仕事の整理ができるようになり、優先順位がきちんとできるようになると、自分なりの仕事の進め方に新しい仕組みを作ることができる。
忙しくて、仕事に追われるスパイラルに入ると、なかなか抜け出すことは難しい。だが、ここで踏ん張って、自力で脱出する術を身に着けないと、どんどん状況は悪い方向に流されていく。それを回避するポイントは、いったん立ち止まり、先のことに目を向けることに尽きる。力技で仕事を処理したところで、また、同じ仕事の波が押し寄せてくることは忘れないようにしたい。
5.仕掛けや仕組みをバージョンアップさせる
だが、新しい仕組みを作ったとしても、数か月も経たないうちに、何らかの問題が生じるものだ。今度は、それを可能な範囲でできるだけ早く修正し、バージョンアップさせることが求められる。この仕組みが実態に即したものになると、一段と効率よく、仕事を消化することができる。繰り返しになるが、バージョンアップさせていくためには、仕事を再びストップさせて、考え直す必要がある。その時間を惜しんでいると、いつまでも抜け出せないということを心得ておきたい。
いつも「忙しいから、時間がない」と嘆いている人は、その流れを断ち切ることに、力を注ぐべきだ。その決意がないと、新しい仕組みを作ることはできない。会社員をしていると、5年、10年、15年、20年、とたちまち月日が流れていってしまう。目の前の仕事を消化することだけが仕事ではない。立ち止まって、考えて、自分なりの解決策や結論を出す努力をすることも、大切な仕事なことなのだ。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。著書に「封印された震災死」(世界文化社)、「震災死」「あの日、負け組社員になった…」(ダイヤモンド社)、「非正社員から正社員になる!」(光文社)、「悶える職場 あなたの職場に潜む「狂気」を抉る」(光文社)など、多数。