◎稲盛経営のエッセンス??フィロソフィ
??「常に明るく前向きに」というのは稲盛さんのフィロソフィ(哲学)のひとつです。それをJALではどのように浸透させたのでしょうか。
稲盛 社員全員が一体となって本気になるためには、私と同じ考え方、価値観、判断基準を持ってもらう必要があります。そこで、今日まで五十数年間の経営のエッセンスをまとめてきたフィロソフィをJALの社員にもわかりやすいように表現し直し、全社員で勉強してもらうことにしました。しかし、そのフィロソフィは、「人間として何が正しいかで判断する」「真面目に一生懸命仕事に打ち込む」といったように、非常にプリミティブな道徳観に基づいたものです。当初は、「何でこんなことを学ばなければならないんだ」とか、「フィロソフィが会社の経営とどんな関係があるんだ。道徳で会社経営ができるわけがないじゃないか」とか、そういうふうに懐疑的に思った社員もたくさんいたと思います。特にインテリであればあるほど、賢い人であればあるほどばかにするものです。しかし、子供の頃に聞いたことがあるし、言われなくても知っていると思う内容でも、はたして身についているでしょうか? それを日常の行動に生かしているでしょうか? 知っているだけでは何の意味もないことなのです。「フィロソフィをただ知るだけではなく、その価値観や判断基準を身につけて、それで日々の行動を律してもらいたい」と、私は反応が鈍くても一生懸命そう繰り返しました。
「目の前にある仕事に必至に打ち込むと雑念・妄念を忘れ、
知らず知らずのうちに自分自身の人間性が高まっていくのです」
不便なホテル暮らし、しかも無給で3年間JAL再生に打ち込んだ。 |
2012年9月19日、東京証券取引所で再上場を記念するベルセレモニー。 |