ステージに上がってみた。ステージから見ると、客席がとても近く感じる。演技者の位置から客の顔がはっきりとわかるぐらいだ。ステージの床はベニヤ板で出来ており、1枚ごとに外すことができ、大迫りだけでなく、一人で迫りを上がったり、階段を作ったりすることができる。
この劇場の大きな特長は、照明やセットを吊り下げる「バトン」が60本もあるということ。オペラ専用劇場の新国立劇場を除き、通常の劇場としては日本で一番多い数だという。バトン1本につき、1tの重さを吊るすことが可能で、1秒間で2mの速さでアップダウンできる。実際に目の前でバトンが上がっていったが、かなりのスピードだ。
「バトンの数を増やした理由は、上演する演目が招聘ミュージカル中心ということにある。ブロードウェイから来るミュージカルのセットは、間口が16m、奥行きが12mぐらいだが、照明を含めて舞台セットを現地からそのまま持ってきて、それを組み立てて吊り上げる。
しかし、日本の劇場だと、吊り上げた場所に照明のブリッジがあったり、反響板があって引っかかってしまうことが多い。東急シアターオーブはステージ上、24mの高さまで何もないので、海外から持ってきた舞台セットをそのまま吊り上げるだけで舞台ができ、早ければ2日ほどで開幕の緞帳を開けることができる」(伊集院さん)
劇場内に機材や小道具を運びこむ搬出入にも、様々な工夫が施されている。幅が8m、高さ4.5m、奥行3mで10tまで運ぶことができる搬出入用の大型エレベーターに乗って移動してみた。一般のエレベーター比べると、かなりゆっくりと動く。
「搬入口の階まで降りるのに3分半ほどかかる。今まで一番多かった機材で、11t車で32台分を入れたことがある。他の店舗と同じ搬入口だが、2日間に分けて照明、衣装、音響、舞台セットをこのエレベーターで搬入した」(伊集院さん)