◎麻雀も人生も捨てることが大事
一方、勝負中に心がけているのは〝微妙な変化〟を感じ取ること。
「振り返ってみると、俺は幼い頃からキョロキョロしていて、〝落ち着かない〟と言われた。でも、今思うと、落ち着かなくてよそ見していたわけじゃない。学校では授業を聞きながら、教室全体を見渡し、いろいろな物事の変化を感じ取っていたんだろうな。結局、その積み重ねで運気の流れが読めるようになり、ツキもコントロールできるようになったということだろうね」
桜井氏は、麻雀では「いかにセンスよくひとつの牌を捨てられるかが大事」というが、それは人生でも同じことだろう。
「我欲ばかりで常に損得勘定をする人は、捨てることに気が回らない。得ようという気持ちばかりが先行すると、結局何も捨てられず、得たものも荷物になってしまうんだ。戦後は身の回りに何も物がなかったから、火事場の馬鹿力も発揮できた。でも、今のような情報過多の社会では、捨てることのセンスが問われていると思う」
◎マイナス思考だと運のない方向へ進む
ビジネスの世界でも〝勝負事〟はたくさんある。同期との出世争いや営業先でのプレゼンテーションなど、ツキに左右されてしまうことも少なくない。
「結局、人づきあいがうまくいかずに嫌になっちゃうと、勝負の際に力が発揮できない。マイナス思考になって、運のない方向に行かざるを得なくなるんだよね。仕事上で勝負強くなりたいなら、〝とにかく仲間を作れ〟というのが、俺からビジネスマンへのアドバイスですね」
麻雀という厳しい勝負の世界で自らツキを呼び込み、勝負を制し続けた桜井氏。その〝感性と経験〟に学ぶことは多い。
桜井章一
1943年東京生まれ。大学時代に麻雀を始め、20年間にわたって無敗を誇る。〝雀鬼〟の異名を持ち、様々な小説や漫画、映画などのモデルにもなる。