〝無敗〟の雀鬼は意外なことを口にした。「麻雀は8割方、ツキで勝ち負けが決まる」??。では、どのようにツキを呼び込んでいたのだろうか。
◎ツキのない人は仕草で判断できる
麻雀は〝ツキ〟によって大きく勝負が左右される世界だ。最初から平等の条件で勝負が始まる囲碁や将棋とは異なり、配牌やひとつひとつのツモの〝結果〟が良ければ、勝負をかなり有利に進めることができる。かつて裏社会の代打ち稼業で無敗を誇った桜井章一氏(69歳)はいう。
「麻雀では配牌の時点で手が揃っていたり、無駄ヅモが全くなかったりする場合がある。まあ、それがツキのある状態ですね。相手にツキがあるかないかを見極めながら勝負を進めるのが麻雀。ツキのない人は目が泳ぎがちだったり、力んで牌を触ったりするので、相手の仕草を見ていれば、ツキのあるなしは判断できます」
自分にツキがあれば積極的に仕掛け、相手にツキがある場合は控えめに牌を取捨選択していく。だが、ツキがない時は防戦一方かと思いきや、そうでもない。
「ツキは身近なところにあって、誰でもフッと手に入れることができる。ツキがない時は動いて呼べばいい。別に人間につくだけじゃなく、背後にあったりもするんだ。そう感じた時は振り返って、こっちに来いと呼ぶ(笑)。ツキがあれば、例えば、オーラスで1万点以上の手じゃないと逆転できない状況でも、フッと1万点以上の手が入るようになるよね」
◎日常の〝違和感〟を放っておくな
ツキを操ることに長けた桜井氏だが、ツキと〝運〟は別物という持論を展開する。
「なかなか理解できないかもしれないけど、運はつかまえられるものではなく、漂っているもの。つまり自分の手ではどうしようもない。風のようにあちこち流れたり、ひとつの場所にとどまったり。でも、この流れを見極めることも勝負では大切なことだよね」
運を見極め、ツキをコントロールすることで勝ち続けてきた桜井氏だが、勝負中以外でも、ツキを呼び込むことを意識するそうだ。
「例えば、普段の生活でも小さな約束事は守るよね。仮に道端にゴミが落ちていたとする。素通りする人も多いけど、俺は必ず拾ってゴミ箱に入れる。道端のゴミという〝違和感〟をそのまま放っておいてはいけないんだ」
つまり、日頃から「徳を積め」ということか。
「そうじゃない。普段から善意ある行動をしろという単純な話じゃなく、目の前にある物事の始末を必ずつけるということ。その積み重ねが勝負の始末をつける場面では必ず役に立つんだ」