4.経営者になることが比較的、簡単
大企業と比べて、中小企業では、役員や社長になることは、単純に「確率」という観点からみても、はるかに容易なことである。しかも、同世代の社員や後輩、部下たちは大量に辞めていく。つまり、ライバルが少ないのだ。さらに、社員のレベルは大企業に比べると、全般的に低い。例えば、就職活動で大企業に入ることができなかった人が、中小企業に流れる傾向は依然として強い。だが、中小企業でも役員になってしまえば、やはり、勘違いしやすくなる。どこかで「自分は優秀」だと思い込んでしまうからだ。
5.劣等感が強い
中小企業の役員や社長を取材していると、同じ業界の大企業に対し、嫉妬したり、ねたみを感じている人が多い。露骨に批判めいたことを口にする人もいる。これもまた、勘違いをする理由のひとつだ。つまり、劣等感を抱いているからこそ、社内では自分を大きく見せようとするのだ。早々と、管理職や役員になれてしまうから、ますます、勘違いをしてしまう。本来なら、これはよくない流れだが、小さな会社ではこの歯止めがない。
中小企業においても、意識が高く、部下などの育成が上手な人もいるし、謙虚な人もたくさんいる。こういう管理職こそ、経営者になっていくべきだ。勘違いをし、威張っている上司の下では、部下は成長しないし、簡単に辞めていくだろう。そうなると、結果的に業績も低迷する。今後、少子化が進むと、優秀な社員を確保することがますます難しくなる。当然、中小企業は人材確保に苦労するはずだ。中小企業の経営者は、将来のことを見据えながら、今のうちから“会社の要”でもある中間管理職のあり方について、考えるべきではないだろうか。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。著書に「封印された震災死」(世界文化社)、「震災死」「あの日、負け組社員になった…」(ダイヤモンド社)、「非正社員から正社員になる!」(光文社)、「悶える職場 あなたの職場に潜む「狂気」を抉る」(光文社)など、多数。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)も好評発売中。