■連載/ヒット商品開発秘話
すかいらーくが展開するファミリーレストラン、「ガスト」の看板メニューである『チーズ IN ハンバーグ』。定価499円(税別)と安価で、味の良さもさることながら、ナイフを入れた瞬間にチーズがあふれ出る様子に驚かされ、目でも楽しめる一品だ。2008年12月の全国発売と同時に大人気メニューとなり、これまでに5000万食以上も提供されている。
■『チーズ IN ハンバーグ』誕生まで
「ガスト」で『チーズ IN ハンバーグ』が開発された背景には、同社の社名にもなっているファミリーレストラン「すかいらーく」で同じメニューが提供されたことにあった。「すかいらーく」で『チーズ IN ハンバーグ』が提供されたのは、2007年暮のこと。調理はもちろんのこと、スライスしたゴーダチーズをパテに入れて成型する作業も店内で行なっていた。『チーズ IN ハンバーグ』は「すかいらーく」だけでなく、他の業態でも提供されており、人気メニューとなっていた。
この流れに乗り、「ガスト」でも『チーズ IN ハンバーグ』の提供が模索された。ただ、提供に当たっては「ガスト」の店舗数の大きな課題となった。「すかいらーく」が160店ほどだったのに対し、「ガスト」は約1300店。これだけ多いと、店内では成型ができない。成型方法を一から見直す必要に迫られた。
そこで目を付けたのが、同社が展開する中華レストラン「バーミヤン」で提供する中華まんを製造する機械。工場にあるこの設備を活用することにした。
とはいえ、中華まんの製造機械を使うことに問題がなかったわけではなかった。第一の問題がチーズ。スライスチーズが使えるわけではない。まず、ホワイトチェダーチーズを主体としたチーズディップを使ってみたが、このチーズは加熱すると伸びが落ちた。したがって、ナイフを入れたときに、とろけたチーズがパテからあふれ出てくることがない。そこで、熱を加えると伸びが良くなるモッツァレラチーズをダイス状に加工したものを加え練ったものを使ったところ、伸びが改善された。
また、生地とチーズの固さを揃える必要もあった。それは、チーズと生地の固さが同程度だと、成型時にチーズが平均的に伸びるため。生地を柔らかくすると肉の旨味が落ちてしまい、チーズを固くすると焼き上げたときに肉から飛び出てしまうことから、両者の固さを合わせ、最適なバランスを取ることに苦労したという。
「ガスト」では2008年10月に、『チーズ IN ハンバーグ』の試験販売を開始。同年12月に全国発売となった。12月だけで100万食以上を提供し、幸先の良いスタートを切ることに成功した。