3.昔のイメージにとらわれ過ぎている
会社幹部が「彼は、10?20年前、大きなプロジェクトをやり遂げた実績がある」などと言い、部長に昇格させることがある。はるか昔のことであっても、それを根拠に部長に昇格させてしまうのだ。ところが、会社幹部は、その人物のここ10年ぐらいの実績や働き、評判について、正確に把握していない場合がある。昔と今とでは、本人の仕事への姿勢ややる気などが大きく変わっている可能性があるため、本来なら、ここ数年の働きを最優先に判断すべき問題だが、会社幹部は部長に昇進させた社員の、昔のイメージに影響されすぎているのだ。
4.「業績を重視」という過ち
ここ20年ほど、特に大企業では、部長などに昇格させる時の基準として、課長の時の実績や成果を重視している。これらの評価が低いと、昇格はなかなかできない。逆に、部下の育成や指導などがあまりできなくとも、高い実績や成果を残せば、昇格できる可能性が高いのだ。じつはこれも様々な問題を生む大きな要因となっているのだ。もちろん、実績や成果だけで判断しているわけでないかもしれないが、少なくとも、部下の育成能力や指導力を重視して、昇格をさせている企業は少ない。
部長に限らず、会社が社員を昇格させる時、常にそこには曖昧さがつきまとう。完全に客観化された人事など、存在しない。なぜ、こんな人が……という疑問や怒りが消えないこともあるだろう。大切なことは、そこで社内の昇進のからくりを考えてみることだ。誰が、どのタイミングで、どのような理由で、決めているのか、と冷静に考えるだけでも、会社全体のことが理解できるようになるはずだ。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。著書に「封印された震災死」(世界文化社)、「震災死」「あの日、負け組社員になった…」(ダイヤモンド社)、「非正社員から正社員になる!」(光文社)、「悶える職場 あなたの職場に潜む「狂気」を抉る」(光文社)など、多数。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)も好評発売中。