■連載/あるあるビジネス処方箋
なぜ、あの人が部長になったのか? 仕事はできないし、部下への指導もまともにできない。それでいて、めちゃくちゃな指示をして叱る。傍から見ていると、理解できないし、怒りすら湧いてくる。あなたの周りに、そんな上司はいないだろうか。そんな人物を部長に昇格させた張本人、それは、社長、取締役、執行役員、本部長たちである。じつは、これはどの企業でもよく聞かれる話だ。今回は、社長や役員、執行役員、本部長などが、なぜ誤った判断をし、問題のある社員を部長という要職に昇格させたのかをテーマに、会社組織のからくりについて考えてみたい。
1.「マネジメント」の定義も意味も曖昧
まず、前述のとおり、「マネジメントのことがわかっていて、部下を統率し、チームを作ることができる」と、社長、取締役、執行役員、本部長など幹部たちから思われているから、部長に昇格できるのだ。逆にいえば、「部下をまとめ上げ、チームを作ることができない」と判断されると、部長などに昇格することは難しい。つまり、チームを作ることができる人材だと判断されたことが有力な理由だ。ところが、この部分を正確に判断することは実に難しい。そもそも「マネジメント」の定義も、「チームを作ること」の意味も、正式に決まったものがあるわけではない。会社によっては「マネジメント」の中に、部署の予算作成やその管理、部下の育成、指導などを含む場合もあるし、そうでないケースもある。明確な基準がないから、社長や取締役、執行役員、本部長などの恣意・主観が働きやすくなる。結果として、部下を統率できなかったり、組織を作ることができない人間が部長に抜擢されることは多々ある。
2.現場のことをわかっていない
マネジメントができたとしても、現場のことをわかっていない人がいる。例えば、取引先とのこれまでの関係や、部下のそれぞれの仕事などについてだ。他部署から異動になり、新たに部長になった人などによく見られる。あるいは、ベンチャー企業で他社から移籍してきて部長になった人についても、こういった話はよく聞かれる。こういう人物は実際のところ現場のことをさほどわかっていないのに、会社の幹部たちは「(彼は)わかっている」と信じ込んでいるのだ。しかも、自分自身も「俺は現場のことはよくわかっている」と思い込んでいる。実はこの“隔たり”こそが、大きな問題なのだ。このレベルの人物を部長に起用したことは明らかに判断ミスであるはずだが、会社の幹部は得てして、自分たちのミスを素直に認めようとしない場合がほとんどだ。