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元刑事に聞いた、月曜の憂鬱がなくなる「非日常」のつくり方

2018.11.05

-それで言うと、刑事という仕事には、非日常が良く起こりそうですよね?

榎本:警察の仕事は非日常ばかりです。例えば職務質問って、一般の人からすると「なぜあるんだ?」という感じなんですが、警察官にとっては当たり前の仕事なんです。で、職務質問って、実は警察官の方も緊張する(締まる)んですよ。いきなり人に話しかけて、しかも犯罪者を検挙するためのものだから、何が起こるかはわからない。アドレナリンがブワーッと出るんです。犯行現場に武器を持って臨場するし、パトカーの緊急走行なんかも。だから刑事って言うのは、働き方の曜日感覚がないという理由だけでなく、いつも「締める」と「緩める」の繰り返し、非日常と日常を行ったり来たりなので、月曜が憂鬱なんて状態にはなりにくいんだと思います。

―なかなか想像できない世界ですね…。

榎本:その経験から、月曜が憂鬱であるという方々に伝えたい重要なことがあります。「締める」ことをやりすぎてはいけません。「締める」ことは、人から感情のエネルギーを奪うおそれがあります。逆に「緩める」のは、エネルギーを人にちょっとあげる行為です。例えば私は、麻布署の留置場で看守をしたことがあるんですが、留置場で看守が留置人を締めすぎて、エネルギーを奪い続けると、留置人は荒れて、暴れたり、逃げようとしたり自殺しようとしたりします。そして次に、留置人同士もエネルギーを奪い合います。企業の中でも同じことが起きているところがたくさんあります。いわゆる「マウンティング」や「ハラスメント」とよばれるような行為で、このような連鎖反応はエネルギー戦争と呼ばれています。

-エネルギー戦争…。

榎本:誰かがエネルギーを奪うと、今度は奪われた人が別の人からエネルギーを奪おうとして、奪い合いが始まる。自分が誰かのエネルギーを奪うと、その連鎖反応は世代や土地を越えてどこまでも続いて行くおそれがあります。そして、因果応報でいつか必ず自分もエネルギーを奪われます。だからまず、自分は人のエネルギーを奪わないようにし、逆にエネルギーを少しだけあげてほしいんです。アンパンマンみたいに(笑)。エネルギーをあげるとはすなわち、締まり過ぎて苦しそうな人を緩めてあげること。具体的には声をかけてあげるだけでもいいんです。笑わせてあげるとか、おしゃべり、雑談をするとか。留置場の看守は、留置人と人間らしい交流をしたほうがいいし、家庭では子育てで忙しい奥さんに労いの声をかけてあげるとか、悩んでいる小学生がいたら話しを聞いてあげるとか。普段から誰かにエネルギーを少しずつ分けてあげていると、全く別の所からまわりまわって、元気玉のように返ってくるようになっているんです。例えば私も警察にいた時に、強行犯の女性係長がいて、その頃すごく疲れていたようで、「大丈夫ですか?」というような声をかけたんです。そうしたら、その人が転勤するときにご栄転祝いのお礼状をもらって、「あの時声をかけてくれてありがとうございました。とても嬉しかったです。」というようなことが書かれてあったんです。それを読んで私も元気をもらいました。そういう風に、みんなのエネルギーが増えていけば、疲弊しない世界になっていくはずです。

-なるほど、その通りだと思いました。でも、最後にあえて聞かせてください。世の中には、そうは言っても、どうにもならないモンスターがいると思います。どうしてもエネルギーを奪ってくる人がいたら、どうしたらいいんでしょうか。

榎本:実際、私がいた時代には警察の中にもそういう人がいました。いろいろな所属がありますが、職場によっては負のエネルギーが渦巻いているところもあります。大変な仕事をしなければならない組織には、残念ながらそういうダークサイドも存在します。それで私もいろいろあって、最終的に警察を辞めてしまったんですが、あなたがモンスターと対峙する専門家でない限り、どうにもならないモンスターとは、距離を置くのが一番です。それでも、もし相手にエネルギーを先に奪われたとしたら、相手を傷つけないように、そしてもちろん自分もそれ以上、傷つかないように距離を保って、あとは最も公平な第三者である司法の手に委ねましょう。モンスターから奪われたエネルギーを自分で奪い返すのは、とてもリスクが大きいからです。そんな風に、自分が、エネルギー戦争を終わらせる勇気をもって、エネルギーをちょっとずつ周りにあげられる人になる。自分から、そんな世界を作れたらいいなと思いますね。

【話し手プロフィール】
榎本澄雄(えのもと・すみを)
株式会社 kibi 代表取締役。元警視庁警部補。
警視庁麻布署在籍当時知能犯担当刑事として自閉症者を被疑者とする事件を担当し、退職後は特別支援教育の現場に身を置いた。著書に『元刑事が見た発達障害』(花風社)、共著に『自傷・他害・パニックは防げますか?』廣木道心+栗本啓司+榎本澄雄=著(花風社)がある。
2018年11月23日 栃木県小山市立中央図書館主催・平成30年度ビジネスセミナー「学んでみよう!元刑事の観察力とコミュニケーション」にて講演予定。
2018年12月8日 大分県・大分県済生会日田病院・大分県社会福祉協議会主催「権利擁護・地域生活定着支援セミナー」基調講演「元刑事が見た発達障がい 真剣に共存を考える」にて講演予定。

【聞き手プロフィール】
高橋晋平(たかはし・しんぺい)
株式会社ウサギ代表取締役、おもちゃクリエーター。あらゆるジャンルを「遊び化」することを考え、月曜日を楽しくする方法の研究もしている。開発商品に、新カードゲーム『グーチョキパーダラピン』や、相手を想い出したことを伝える鳩時計「OQTA HATO」など。新しい企画を“仕組み”で生み出すメモの技術を解説した書籍 『企画のメモ技』を2018年に出版。

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