ある調査では、社員食堂から足が遠のく理由で多いのは「おいしくない」「値段が高い」「好きなメニューがない」などが挙がっていた。そこで従業員に愛されている社員食堂とはどんなところなのか、そして新しい斬新な社員食堂を、社員食堂に詳しい識者に聞いた。
社員食堂を利用しない理由1位は「おいしくない」
ホットペッパーグルメ外食総研が2018年6月に実施した20~60代の約1万人に対する「社員食堂」についての調査では、社員食堂を「ほとんど使わない」人が45.8%にも上っていた。
自分の勤めている会社に社員食堂が「ある」と答えたのは22.7%にとどまった。しかし20歳代男性は49.9%と約半数の人の勤め先に社員食堂が存在するようだ。
社員食堂を利用する理由のトップ3は「安く食べられる」「外部に出るのが面倒」「短時間で済ませられる」となっており、安さと手軽さのニーズが多い。「栄養バランスのよさ」「味がよい・おいしい」はそれより下となった。
一方、社員食堂を利用しない理由トップ3は「おいしくない」「金額が高い」「メニュー数が少ない」で、「魅力的なメニューが少ない」「慌ただしい、気分転換にならない」「食べ飽きた」などが続く。「おいしくない」と感じているのが特に多かったのは50歳代男女。年齢を増すほど味に満足できていないようだ。
株式会社社員食堂のCEOたかはしかよこさんは、この結果について次のようにコメントする。
「かつての社員食堂は、ちゃんとした朝食・夕食を自宅でとるという前提で提供されるテンポラリの食事、つまり『昼の空腹を満たす』ことを主目的としてその役割を果たしていました。一方、近代においては、単身者が増え、かつて家で食事を作っていた女性は働きに出ていることが多くなったことで外食・昼食比率が高くなったこと、また、外食は安くてそこそこ美味しいものも増えてきており利用もしやすくなったことなどの社会の変化とともに変わってきているニーズに、社員食堂の役割が再定義されていないと推察します」
従業員に愛される社員食堂とは?
「おいしくない」といわれてしまう社員食堂は、やはり現代ニーズに沿っていないのだろうか。しかし、世の中にはしっかり社員に愛されている社員食堂もある。たかはしさんは、花王株式会社、スマートニュース株式会社、有限会社あきゅらいずの3社の社員食堂を“愛されている社員食堂”の好例として挙げる。「全体的な傾向として『家で食べるようなほっとできる食事』が提供されています」(たかはしさん)だという。それぞれの社員食堂の特長を解説してもらった。
●花王
「“社長の家でみんなで食卓を囲む食事”がコンセプトになっています。和洋中華の専門料理人が、その日の築地で仕入れた食材を使って食事を提供します。季節感あふれるフレッシュな食材による提供が特徴です」
●スマートニュース
「『SmartKitchen』という社員食堂があり、利用料は無料。メニューは日替わり1メニューで100%オーガニックの食材で、メイン料理と副菜の盛り合わせが提供。社員が気にいって通っていたオーガニックカフェに運営を依頼しています。給食業者に丸投げではなく、自社プロジェクトとして立ち上げ、提供者と要望をすり合わせながら一緒に作っています」
●あきゅらいず
「『森の食堂』という定食専門の社員食堂があり、一汁三菜、玄米ご飯で提供しています。一般にも開放されており、『一日〇食限定』などのように食数限定です」