「新宿発、小田原折り返し秦野行き」の理由
「皆様、大変長らくお待たせいたしました。本日は特急ロマンスカー、LSE7000形、さよならツアーに、御乗車くださいまして、誠にありがとうございます」
定刻通り、12時40分に発車。2時間33分にわたる長い旅路がついに幕を開けた。松村車掌の丁寧で、聞き取りやすいアナウンスが車内に心地よく響きわたる。この列車は海老名車掌区、海老名電車区の様々な世代の乗務員、小田急トラベル、小田急レストランシステムの職員が合計約30人、私や広報も含めた取材陣6人が、乗客約400人とともに、仕事をしながらラストランを楽しむ。
新宿を発車すると、小田原までノンストップ。特急ロマンスカー〈スーパーはこね〉は最速59分(表定速度83.9km/h)に対し、この列車は1時間20分(表定速度61.9 km/h)。新宿―新松田付近間のダイヤは、臨時特急ロマンスカー〈ふじさん31号〉御殿場行き(新百合ヶ丘、相模大野、本厚木、秦野停車)とほぼ同じなので、後続の特急ロマンスカー〈はこね19号〉箱根湯本行きに追い抜かれることもない。
世田谷代田を通過すると、海老名車掌区、海老名電車区の乗務員が車内をまわり、記念乗車証の配布、手作りのパネルを用いた記念撮影会が行なわれる。
そして、今度は秦野市 市長公室広報課の上松太一課長代理がごあいさつ。
「御乗車の皆様、こんにちは。秦野市からまいりました、広報課の上松と申します。
この度、ロマンスカーLSEさよならツアーの最終停車駅が秦野駅になったということで、“秦野市として、なにかその思い出づくりに御協力ができないか”と思いまして、いくつかささやかではございますが、御提供させていただいております」
秦野市からは「おいしい秦野の水」というペットボトル、抽選会の当選商品として、入浴施設の券、秦野産のヒノキコースターなどが用意された。
小田急によると、7000形LSEのラストランが「新宿発、小田原折り返し秦野行き」になった理由が2つあるという。
ひとつ目は展望席(1・11号車)の乗客に「進行方向からの展望」、「逆方向からの展望」を楽しんでほしいこと。ふたつ目は停車時間のとれる終着駅が秦野だから。意外なことに、小田原のホームでは停車時間を確保できないという。
また、下り新宿―小田原間の片道運行よりも、上り小田原―秦野間も運行ルートに入れることで、秦野で停車時間を確保し、乗客が撮影できるようにしたのだ。“乗車後の余韻を楽しむ”という、小田急の心づかいに座布団10枚!!