■連載/あるあるビジネス処方箋
仕事の報告を誰にすればいいのか、わからないー。そのような経験がないだろうか。
最近、私が取材をした20代の会社員が「2人の上司がいて、どちらに報告をすればいいのか、迷うことが多く、気がおかしくなりそう」と話していた。私は会社員の頃を思い起こした。私も、仕事の報告を誰にすればいいのか、混乱し、精神的に疲れ果てた。読者諸氏に参考になるかもしれないので、紹介したい。
私が勤務したその職場は、1つの部として成り立っていた。部員は20人ほど。その中に3つの課がある。それぞれの課が約5~7人。1つの課に、私は在籍していた。上司である課長は、50代前半の女性。この女性課長の上に部長がいる。40代後半の男性だった。この課長と部長が、社内で評判になるほどに険悪な関係だった。
女性課長はプレイヤーとしての実績は、男性の部長よりは2~3ランク上だったようだ。だが、昇格は伸び悩んでいた。本人は「自分は女性だから、部長になれない」と周囲の女性に漏らしていたらしい。課長職が12年を超え、そこから上がれないようだった。当時、30代で一般職の私が見た限りでは、「女性だから…」ではなく、「マネジメント能力が低いから部長になれない」ように見えた。
女性課長はささいなことで感情的になるタイプで、特に相手が男性になると、対抗意識をむき出しにして反論をしたり、からんだりする。40代以上の女性社員からは「男社会と闘ってくれる」と慕われていたが、20~30代の女性からは敬遠されていた。
40代後半の男性の部長はプレイヤーとしても、マネージャーとしても実績に乏しく、特にマネジメント能力が低かった。部署全体の業務やそれにともなう時間管理を苦手としていた。社内で有名になるほどの「お坊ちゃま」で、資産家の息子だった。社員たちの評判では、「子どもの頃から極端に甘やかされ、常に自分中心の発想や考え方をする」というものが多かった。実際、3つの課長の仕事を事実上、取り上げ、一般職のように扱い、ひとりで3人の課長の仕事をしようとしていた。権限移譲や役割分担などがほぼまったくできない。
当時、この世代(40代後半)は1990年代の不況時に大量に退職していた。部長の同期生は、数えるほどしかいないようだった。したがって、「倍率1倍」で部長になることができたらしい。
私は30代の数年間、この部長と課長の間で苦しんだ。たとえば、直属上司である女性課長に報告をする。本来、ここで私の報告は終わるはずだ。ところが、部長は私に報告を求めてきた。組織のヒエラルキーからいえば、私が女性課長に報告し、必要があるときは、課長が状況に応じて部長に報告をするべきである。しかし、この課長と部長が前述したとおり、すさまじい確執だった。