連載/あるあるビジネス処方箋
大卒で22~23歳で会社に入り、27~28歳で早くも頭角をあらわす人がいる。
その人たちに共通しているのは、はまっていることだ。現在の会社や部署、上司や周囲の社員との関係、仕事との相性が相当にいいのだろう。特にその仕事に性格や気質、能力、適性などがマッチしているはずだ。今回は、27~28歳で注目される会社員の特徴を「はまる」という言葉から考えたい。
「はまる」と優秀に見える
27~27歳であろうとも、現在の仕事などにはまっている人は、同世代の社員よりも素早く、正確に、しかも大量に処理する。ベテランである40~50代と変わらない場合もある。こういう社員は、上司から高く評価されていく。それにともない、周囲の社員も一目を置く。ほかの部署の管理職も認めるようになる。社内ではいちやく「若くして優秀な人」と見られるようになっていく。会社では、上司からまずは認められない限り、周囲や社内で高く評価されることはまずありえない。
今後のことはやはり、わからない
はまる人は、その仕事や部署などにおいては、今後、伸びていく可能性が高い人材と言える。少なくとも、本部長や役員、社長などからは期待が大きいはずだ。しかし、そのことは「人材として優秀」であることを必ずしも意味しない。「その仕事には適任であり、経験が浅くとも、一定の結果を出した」とは言えるかもしれない。だが、あくまで「ごく限られた仕事」でのことである。ほかの仕事をしても、その高いレベルで処理できるとは言えない。
中堅・大企業に勤務しているならば、今後、30~40代になると、人事異動や配置転換が増える。幅広い分野で、多くの仕事をせざるを得ない。上司や同僚が変わる可能性がある。その都度、「はまる」ことができるならば、本当の実力と言えるかもしれない。しかし、そのような人は企業社会全体から見ると、ごく少数だ。言い換えると、27~28歳ではまり、高く評価されている人の多くは、10~20年後までその勢いを維持することはまずできないとみるのが、妥当なのだ。
勘違いをする
はまる人の多くは、勘違いをする傾向がある。「自分はほかの20代の社員よりもはるかに優秀で、30~40代とも対等に張り合える」と思い込むことすらある。残念ながら、そのような人は数万人にひとりいるかいないかで、「天才」と呼べる人材だ。
多くの会社員は、ごく普通の才能や能力しか持ち合わせていない。「はまる」のは、今だけのことのはずだ。例えば、人事異動になり、上司が変わると、好調なリズムを崩し、冴えない社員になる可能性が十分にある。むしろ、それが健全と言える。27~28歳では経験が圧倒的に足りないのだから、「俺は優秀」と勘違いするほうに問題がある。経験が足りないがゆえに、その勘違いにすら気がつかない人もいる。
転職・独立をしても…
勘違いをした結果、27~28歳で「こんなレベルの低い連中と仕事はできない」と思い、転職をしたり、フリーランスになったり、自ら会社を経営しようとする人もいる。その多くは数年以内に失敗したり、後悔する。中には、転職を繰り返し、労働市場においての価値をどんどんと下げていく人もいる。そのことは今後のキャリアを考えると、相当に不利になる。しかし、そのことにも、経験が浅いがゆえに気がつかない。時々、転職先などで成功する人もいるが、その状態が長く続くとは限らない。
27~28歳は、会社員として1つの分岐点ではある。現在の仕事などにはまり、上司や周囲から認められていく人がいる。一方で、はまることなく、目覚ましい結果を出すこともなく、上司や先輩、同僚、さらには後輩からも軽く見られる人もいる。
はまることができない人は焦ったり、嫉妬したり、ねたんだり、落ち込んだりするだろう。だが、広い視野で考えよう。はまっているかのように見える同世代の社員が今後も、そのまま上手くいく可能性が低いことは心にとめておくべきだろう。27~28歳の時期は、まずは経験や場数を踏み、確実な力を養うべきなのだ。他人の「瞬間的な成功」に惑わされる必要などない。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。
※記事中のデータ等は取材時のものです。