ライスでダムの壁(堰堤)を、カレーでダム湖を表現した「ダムカレー」。半世紀近く前に、黒部ダム付近のレストランが「アーチカレー」という名で販売し始めたのが、発祥である。
時代は下って2007年に、和食レストランの三州家(東京都)がダム好きに向け、裏メニュー的に出していたのがメディアに取り上げられて大きな話題となり、これを契機にぽつぽつと各地でダムカレーが出始めた(黒部ダムの「アーチカレー」も2009年に「黒部ダムカレー」と改称)。さらに、国土交通省がインフラツーリズムを推進し始める2010年代前半から、突如として大急増。あれよあれよと、津々浦々で130種類ほどのダムカレーが提供されるようになった。ここまで増えると、各店は差別化をはかって、実に多彩なダムカレーが登場することになる。
今回の記事では、元祖から「これがダムカレー?」と驚く個性派まで、選りすぐったダムカレーを紹介したい。
元祖「黒部ダムカレー」(くろよんロイヤルホテル他)
未曾有の難工事を経て、完成から55年を過ぎてなお、日本一の高さ(186m)を誇り、多くの観光客が訪れる黒部ダム。黒部ダムとカレーの結びつきは、極寒の地でダム建設に従事する作業員に出されたカレーに始まる。
ダムが完成して間もなく大町クラブハウス(現くろよんロイヤルホテル)で「アーチカレー」という名でダムカレーが産声をあげ、1970年頃には扇沢駅大食堂(現扇沢レストハウス)でも本格的に提供が始まった。
今では、地元大町市の黒部ダムカレー推進協議会に加盟する18店が、各店の趣向を凝らしたダムカレーを提供中。なかでも元祖の元祖といえる、くろよんロイヤルホテルのダムカレーは、地元産古代米を混ぜたライスがアーチを作り、ルーにはポークカツレツが乗った上品な雰囲気の一品。
各地のダムカレーを見ると、ルーが堰堤の外側(ダム湖)にあるもの、内側にあるものに分かれるが、黒部ダムカレーは全て外側にある。これは、推進協議会が定めた「黒部ダムカレー5つの掟」の1つに「カレーのルーは必ず堰堤の外側に流し込むべし」という掟があるため。また、ルーの上には「ガルベ(遊覧船)」に見立てて、なにかしらトッピングを乗せるという決まりもある。そうした、こだわりの反映された各店の黒部ダムカレーを食べ比べするのも一興だろう。
【基本情報】
住所:長野県大町市大町3887(大町市商工労政課内:黒部ダムカレー推進協議会事務局)
電話:0261-22-0420(内線543)
公式サイト:http://kurobedam-curry.com/
みなかみダムカレー(旅館たにがわ他)
利根川源流に位置する、群馬県みなかみ町。ダムが7つもあることから、「関東の水がめ」あるいは「ダムの聖地」と呼ばれるこの町には、当然のごとくダムカレーがある。ダムカレーを提供するところは10店近くあり、その1つが「旅館たにがわ」。
ここで提供される、特製「みなかみダムカレー」は充実の3種類。アーチ式の矢木沢ダム、ロックフィル式の奈良俣ダム、重力式の藤原ダムと、型式の異なるダムをモチーフにし開発された。
なかでも一番人気なのは、アーチ式のダムカレー(上写真中央)。ルーには県産のマイタケとこんにゃくが入っているが、それぞれ流木と魚を表す。上州牛など地元食材をふんだん使い、味もよろし。食べるときには、堰堤に見立てたライスの中央を崩し、ルーを「放流」するのがお約束。日帰り利用でも食べられるが、予約が必要で、ランチ時に提供される点に注意。
【基本情報】
住所:群馬県吾妻郡長野原町大字林1567-4
電話:0279-83-8088
時間 9:00~20:00(ダムカレー提供時間:11:45~12:30)
公式サイト:http://www.ryokan-tanigawa.com