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今回のリファレンスはプリアンプが『SV-Pre1616D』パワーアンプが『SV-S1616D』である。細かく言えば整流管やカップリングコンデンサーが異なるが、このペアで鳴らしている。試聴曲は時間上の制約から2曲、佐山雅弘トリオ『メモリーズ・オブ・ビル・エヴァンス/マイ・ファニー・バレンタイン』(96kHz/24bit)と森恵「Re:Make1、Grace of the Guitar、COVERS Grace of The Guitar+/時には昔の話を」(48kHz/24bit)を聞いた。プリアンプは変更せずにパワーアンプを交換して試聴している。
SUNVALLEYの真空管式DAC『SV-192PRO powered by M2TECH』を使用している。
真空管パワーアンプの出力は8Ωのダミー抵抗に接続されミキサーに送られる。
スタジオにあるGENELECのアクティブスピーカーから音楽が再生される。
●SUNVALLEY『SV-S1616D/300B』
自宅のリファレンスシステムと同じペアで最初に聞く。300BシングルでNFBも少ないため真空管のやわらかい響きが乗った音という認識だったが、これが別のアンプで聞くと解像度が甘かったことが判明。音の粒立ちよりなめらかさ重視だが、ちょっと甘すぎるかもしれない。写真を撮らなかったので自宅のアンプを掲載。実際は整流管ではなくダイオードモジュールを使用した。
●SUNVALLEY『SV-S1616D/EL34』
『SV-S1616D』は三極管と五極管に対応する設計で、ボードを買い足せば五極管も使えるようになる。ということでほぼ同じ回路でEL34バージョンを試聴。EL34は1953年に開発された五極管でAB級プッシュプルで90Wもの出力が得られる設計の高効率真空管。マッチドペア管でも5000円ぐらいで入手できるハイコスパな球だ。私的にはデザインが地味なのが残念である。
その音はジャズも女性ボーカルも音が鮮明になり、低域のドライブ感が向上してドラムスのレスポンスが良くなった。女性ボーカルは若々しい感じで細かい響きにフォーカスが合ってニュアンスが出た。しかし、これは少し真空管らしくない音とも言える。
●SUNVALLEY『SV-S1616D/KT150』
KT150と言えば、ハイエンド真空管アンプメーカーのオクターブ『V80SE』(154万円)に採用されたロシアTung-Solブランドで2013年に発売された、純粋なオーディオアンプ用のビーム管で、プレート損失70Wで大出力が取り出せる設計になっている。放熱効果を高めるためかユニークな卵型バルブを採用したインパクトの強いデザインだ。そのルーツは6C33C-Bと推測する人もいる。私は以前、その形に惚れ込んで6C33Cのアンプを作ったことがあり、KT150は気になる存在だ。このアンプで使った場合、出力はクラスAで9Wと大出力にはならないそうだ。
奥行き感があって透明感もあり、芳醇な音。EL34と比較して音のエッジが立ち過ぎない。女性ボーカルは高域が伸び伸びとして、細かい音も再現される。これは真空管にしては珍しい音場感重視の球だと思った。