アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌『残酷な天使のテーゼ』と『劇場版 新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌、『魂のルフラン』の作詞家の及川眠子さんと、歌手の高橋洋子さんによる対談。その後編は、新たにリリースされたマキシシングルのこと、そして働く上、生きていく上で大事なことなど、示唆に富む話へと展開していく。
左:及川眠子さん
作詞家。1960年、和歌山県生まれ。1985年『パッシング・スルー』で、ミニカマスコットソングコンテスト最優秀賞を受賞、作詞家となる。Wink、CoCo、やしきたかじん、大地真央など幅広いジャンルのアーティストに詞を提供するヒットメーカー。直近では、こぶしファクトリー『ナセバナル』、アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』OPテーマ『Fighting Gold』の作詞を担当している。
右:高橋洋子さん
歌手。1966年、東京都生まれ。久保田利伸、今井美樹、松任谷由実などのバックコーラスやスタジオミュージシャンを経て、1991年『P.S. I miss you』で本格的にソロ歌手としてデビュー。圧倒的な歌唱力でポップスからジャズ、アニメソングなどジャンルを超えて歌う。2018年6月、ダブルA面シングルとして『残酷な天使のテーゼ/魂のルフラン』をリリース。現在ワールドツアー中。
アニソンは国境を超える力を持つ最強のパスポート
高橋:私は今ワールドツアー中で、世界中いろんなところへ行かせていただいてるんですけど、皆さん『残酷な天使のテーゼ』を日本語で歌うんですよ。すごくないですか? 作品を見て、主題歌を聞いて、好きになって、これが流れるとテンションが上がるんだよね、となって離れられなくなってしまう人たちがたくさんいるんです。そういう作品になっているのって、プロフェッショナルの集団がちゃんと仕事をしたからだと思うんですよ。
及川:関わっている人が皆、ちゃんと自分の仕事をしているって大事なんだよね。
高橋:『エヴァ』を作っている人たちって「いいじゃん、これくらいで」という考え方を決してしないのではないかと(笑)。だから作品に力もあるし、愛も、プライドもある。だから『エヴァンゲリオン』は世界に誇れるアニメになったと思うし、この曲を歌わせてもらえるのは本当にありがたいことなんです。
及川:でも最初に話が来た時は「テレ東の夕方6時台(※)だし、そんなにヒットするわけないな」と思ってたんだけど(笑)。ただアニメのファンの方は熱心だから、シングルが発売されたら『オリコン』で50位以内には入るだろうと思って、「何、この曲?」と思ってもらえるようなインパクトのあるタイトルにしたんだよね。
※アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』第壱話「使徒、襲来」はテレビ東京系列で1995年10月4日(水)18:30~19:00に放送(地方局ではこれ以降に放送されたところもある)。
高橋:本当にインパクトでしたよ! 私がレコーディングしてから曲を改めて聴いたのは、皆さんと同じように『新世紀エヴァンゲリオン』のオンエアだったんです。そうしたら主題歌の音と絵がシンクロして作られていて、すごい感動したんですよ。それで「これはたくさんの人が聞いてくれるかもしれない」と思いましたね。でもここまで長く歌うとは思ってなかったですけど、それは皆さんが大事に歌い続けて来てくださったから。なので今回発売した『残酷な天使のテーゼ/魂のルフラン』のマキシシングルは世界中の人々に聞いてもらえるよう、そして歌ってもらえるように、日本語詞とそのローマ字表記、そして英訳を歌詞カードに入れているんです。
及川:そしてあのアレンジあってこそだよね。手が込んでる。大森さん、凝り性だから(笑)。
高橋:カラオケだけを聴いても楽しいんですよ。何人かで歌った声を重ねて、何十人分のコーラスにして録音したりしていますし、すごく手をかけてやっているのがわかると思います。私は「アニソンは国境を超える力を持つ最強のパスポート」だと思っているんです。歌うと、本当に世界中で受け入れてもらえるんです。難しいことを言わなくても、歌ったら盛り上がってくれて、コミュニケーションが取れるツールになっているって素晴らしいと思いますね。
及川:私にとって『残酷な天使のテーゼ』は実績になってくれた曲かな。名刺代わりに自分を説明しやすくなった。でも自分が今後一生かけてやることは「エヴァ作詞家」の肩書を取ること。それだけのヒット曲を作る、という目的にもなってくれた。まあ、過去は未来への踏み台よ(笑)。