イケメン営業マン燕さんの人気にあやかる説
次に、ツバメノートの名前の由来を尋ねた。
渡邊社長「それも先代に聞いたことがあります。発売当時、燕さんという従業員がいて、ものすごいイケメンだったそうです。その人が営業に行くと、“ツバメさんのノートちょうだい”とよく注文を受けたそうで。そのまま“燕さんのノート”でツバメノートになったという……」
—–ほ、本当ですか?
渡邊社長「これも諸説ありまして。当時の国鉄、特急つばめ号にあやかったという説もあります」
たしかに、1950年〜60年代に東海道本線に「燕(つばめ)」という特急列車が走っていた。ということで、ツバメノートの秀逸な表紙デザインも、その名の由来も謎なのである。確かなのは昭和22年の発売当初から表紙のデザインは変わっていないということだ。
黄色っぽい紙の名は「背見出し」
あまり注目されていないようだが、大学ノートには他のノートにない機能がある。背表紙に巻かれた黄色っぽい紙だ。鉛筆でも水性ペンでもものが書ける。筆者が大学ノートを愛用する一番の理由もこの黄色っぽい紙にある。
ところで、この紙、何と呼ぶのか。ずっと疑問に思っていた。
「背見出しです」と渡邊社長。「棚に並べたときに何のノートかわかるように、タイトルを記載できるようにつけたものです。発売当初からついています」
明白なお答えをいただいた。背見出し。ストレートな名前だ。ところが今、この背見出しが存続の危機を迎えているという。数年前、背見出しを貼る機械が壊れてしまったからだ。
渡邊社長「そのためA5判のノートには現在、背見出しはついていません。B5判のほうは機械がもう1台残っているので貼れています。ただ、貼るのが機械だけでは間に合わない時期もあり、そのときは手で貼っています」
なんと1冊1冊、手作業で背見出しを貼っているというのだ。その機械は修理できないのだろうか?
渡邊社長「なにぶん古いものですから。修理できる人がいないのです。新しく買うにもなにぶん希少な機械ですからたいへん高価なものになります。ノートの価格に影響が。値段は上げたくないですからね……」
今ある背見出しの機械を大事に使っていくしかないようだ。どうか壊れないでほしいと願うしかない。