ターボモデルはトルクがあり、NAエンジンに対して比較的低回転で巡行できるのが魅力だが、例えば70km/hでの高速走行で耳に届くのはほぼロードノイズのみ(この日はほぼ無風)。エンジン音は、例の2000回転以下で発生するゴロゴロした感触を別にすれば、ほとんど聞こえてこない静かな車内空間が実現されている。
ただ、シートのかけ心地は硬めで座面長も短く感じられ、軽バン専用タイヤのせいもあってか、N BOXに対して路面のザラつきや突起を拾いやすく、段差を乗り越えた際の音・振動の周波数が高めで、乗用車用タイヤを履くN BOXよりはやや気になる印象だった。
とはいえ、仕事でもホビーでも、高速道路の理由頻度が多いなら、迷わずターボを薦める。合流、追い越し加速での加速性能の良さは安全にもつながり、低回転で巡行できることによるゆとり、車内の静かさは、仕事、ホビーユースを問わず、ストレス最小限の運転を可能にしてくれるからだ。
価格はこのN VAN +STYLE COOLの場合、ほぼ同装備でNAが156万600円。ターボが166万8600円と、10万8000円高になる。N VANは、別項で試乗記を書いたNAモデルの出来も素晴らしく、街中で使う分には十二分、どころかエンジンの爽(さわ)やかな回り方など、ターボより優れている部分さえある。100kg程度の荷物を積んでも坂道を無理なく登る動力性能さえ備えているほどだ。が、絶対的な動力性能の差が出る高速走行で、楽で快適なのはもちろんターボモデル。燃費で元を取ることはできないが、先を急ぐときのストレスの大小で元を取る!?ことは可能かもしれない。仕事、ホビーユースのどちらにしても、主に使用するシーンに合わせてNAかターボの選択をすればいいと思う。
ホンダN VAN
https://www.honda.co.jp/N-VAN/
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。