父親世代の職人魂
休憩中、この人とこの人は仲悪そうだなと、思うことはありますよ。
「元々うちは横浜市内の工業地帯にあった従業員十数人の工場で。中小企業の後継者不足は深刻です。廃業すると従業員もお客さんも困ってしまう。会社を引き継いで欲しいと、知り合いの製造業の経営者に頼まれまして。先代が後継者のいない2つの会社を引き継いだのです。その結果、腕のいい職人が集まり、うちの仕事の幅が広がりました。
反面、会社には文化があります。それまで違う会社で、自分のスタイルでやっていた人と、別の会社でやってきた人が隣同士で仕事をすれば、何かしらの摩擦は生じます」(藤澤社長)
父親ぐらいの年齢の先輩ですが、言い合いになる前に僕は間に入りますよ。
「あんな手順で仕事をやられたんじゃ、かなわねえ、ちゃんとやってもらわなきゃ」「言っていることはわかりますけど、あの先輩は今までやってきて、お客さんのクレームもない。製品の精度も出ているんだから、僕に免じて勘弁してくださいよ」
お前がそういうんじゃしょうがねえなと言う先輩もいれば、なんでこの若僧に言われなきゃならないんだという顔をする人もいます。
でも僕はめげずに、自分から親父世代の先輩たちに、アプローチをしていくことを心がけています。「彼は若いけど、職人の気持ちがわかるんでしょうね」(藤澤社長)
何せ、みんな工場に立って仕事になると、目の色が変わりますからね。複雑な加工で時間がかかるのに納期が短くて、これは無理なんじゃないかと思うときでも、みんなで前向きに考え知恵を出し合います。ここを追い込めば、もっと楽に仕上がるんじゃないかとか、普段はわだかまりがあっても、仕事を仕上げることに関してはみんなが一つになる。難しい注文でも必ず仕上げる、職人の魂を感じます。
仕事に取り組む姿勢がかっこいいですよ。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama