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こんなに違う!日本と世界の性教育の内容

2018.07.28

他国における性教育の特徴と“マスターベーション”の位置付け

■スキンシップから教える‐フィンランド

橋本先生:「快感」「心地よさ」の視点を性教育でも大切にしています。

親子のスキンシップなどと同じように、「自分を和ませるもの」としてマスターベーションが説明されます。

「より性を楽しむ」ということを中心に教育が行われています。

■プライバシーを尊重する‐フランス

橋本先生:カトリックの影響が強く、教科書でも人の性交場面などは掲載されていません。

性や恋愛について若年層は映画などから影響を受けることもありますが、「現実との違い」については学校で教えられており、マスターベーションの仕方については、学校では取り上げず、個人の裁量に任されています。

「プライバシーを尊重するという観点から公教育で教えていない」という立場を取っているのです。

■自分を守ることの大切さを指導‐韓国

橋本先生:マスターベーションの記載は多くありませんが、性的暴力/ハラスメントに関しては、実践的な情報を教えています。

例えば、性被害に遭ったときのために、病院や警察の電話番号を教科書に記載し、被害にあった時の対処法として、相手の目を見て「嫌です!」と叫ぶなど、具体的な対応方法についても指導。

万が一被害に遭った際には「自分にスキがあったから悪い」ではなく「相手が悪い!」ということを、男女ともに性教育の場で教えられています。

■自慰行為の項目にも肯定的な変化を見せる‐中国

橋本先生:30~40年前は否定的な表現が多かった中国ですが、現在は学校での正式使用が認められている教科書にも自慰の項目があり、これまで「良くないこと」とされてきた行為を肯定的に捉えるように変化してきているようです。

一方で、(マスターベーションを表記することについて)こどもが一人で読むにはあまりにも露骨すぎるということで、保護者の間では議論を巻き起こしているのも事実です。

こんなに違う! 世界各国の “性教育の教科書” でのマスターベーション

■日本

橋本先生:学習研究社『中学保健体育』(平成25年1月発行)を見てみましょう。

「精子は毎日たくさん作られるようですが、射精されないとどうなるのでしょうか?」という質問に対して「分解されて体に吸収されます。

自慰の有無や回数について悩む必要はありません」と記載されています。

平成21年発行の同教科書では、自慰についてさらに踏み込んだ表現がなされていましたが、教科書の改定とともに、表現も柔らかくなったようです。

■フィンランド

中学生用のある教科書では、女の子も男の子も行うことであり、ストレスを和らげ、性的喜びを与えるものだと表現されています。

■中国

TENGA性教育

橋本先生:小学5・6年生向け教科書で最も伝えようとしていることは、「自慰は正常な行為である」ということ。

する人もいれば、しない人もいる、極めてプライベートな行為であるとしています。

性教育の中で、マスターベーションが果たす役割とは

橋本先生:2009年に「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」が発表されてから、欧米はもとより、アジアにおいても平等な関係性、ジェンダー、非暴力などを含めた「包括的な性教育」が主流となってきました。

マスターベーションの取り扱いについてもガイダンスに記載されています。

性教育は、こどもたちに「これから起こりうる事態への対応」を教えるものです。

例えば、性暴力や性感染症、望まない妊娠などについて学んでいれば、自分自身やパートナーを守ることにつながり、もし、そのような事態に出会っても相談する、検査を受けるなどの対処をすることができます。

性暴力やマスターベーションを含む性の学習をすすめる上で一番大切なことは「自己肯定感」です。

自分のしていることが間違っているとか、自分が悪いとか思い込んでしまわないために必要なのです。

現在は家庭でも地域コミュニティでも、性に関する話をする機会がほとんどありません。

学校という限定された性教育現場において、的確なアドバイスを与えることで、射精障害などを未然に防ぐこともできるかもしれません。

参考 / 取材協力文献 『教科書にみる世界の性教育』
編著 橋本 紀子・池谷 壽夫・田代 美江子 かもがわ出版

【プロフィール】

岩室 紳也
いわむろ・しんや
ヘルスプロモーション推進センター
オフィスいわむろ 代表 / 医師

「コンドームの達人」の異名を持つ泌尿器科医。エイズ予防、思春期の生徒心を扱った講演活動を行う、民間公衆衛生医として被災地に赴くなどその活動は多岐にわたる。主な著書に『思春期の性-いま、何を、どう伝えるか』『エイズ-いま、何を、どう伝えるか』(以上、大修館書店)、『思春期の性を考えよう』(日本家族計画協会)、『男の子が大人になるとき』(少年写真新聞社)、『イマドキ男子をタフに育てる本』(日本評論社)と『つながりから考える薬物依存症』(共著:大修館書店:2018.8) など多数。
HP:http://iwamuro.jp/

橋本 紀子
はしもと・のりこ

女子栄養大学名誉教授

ジェンダー平等をすすめる教育全国ネットワーク世話人代表。日本のジェンダー・セクシュアリティ教育を国際的視野から問題にする。主な著書に『男女共学制の史的研究』(大月書店、1992)、『フィンランドのジェンダー・セクシュアリティと教育』(明石書店、2006)、『青年の社会的自立と教育-高度成長期日本における地域・学校・家族―』(共編著、大月書店、2011)『ハタチまでに知っておきたい性のこと第2版』(共編著、大月書店、2017)、『教科書にみる世界の性教育』(共編著、かもがわ出版、2018)など多数。

関連情報:TENGA https://tenga-group.com/

構成/こじへい

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