睡眠負債を解消する「90分の黄金法則」の効果を最大限に発揮するには、寝るためのセッティングが大事となる。より質の高い睡眠を確保するため、現在の環境を見直そう。DIME9月号は、熱帯夜続きのこの時期、しっかり眠れずにお悩みの方、普段から不眠でお悩みの方に、ぜひご一読いただきたい睡眠の大特集。DIMEで様々な最新トレンド情報を吸収して、猛暑を乗り切ってください!
入眠90分前の入浴が効果的に体温を下げる
人間は寝る前になると体温が下がる。正確には内臓や筋肉、脂肪などから発生する「深部体温」が、活動的な昼の高い状態から夜になると下がっていくのだ。
「昼間は皮膚の温度よりも2℃くらい深部体温が高いんです。そして手足には毛細血管が発達していて、ここから熱を逃がし、体温を下げる、つまり体表から熱放散を行なうんです。こうして皮膚温度と深部体温の温度の差が縮まると、入眠しやすくなります。子供が眠くなると熱放散で手足が温かくなりますが、大人もそうなんです。しかし年齢とともにこれがうまく機能しなくなり、寝つきが悪く、夜中何回も目が覚めてしまう原因になるのです」
この深部体温を上手に下げることが、布団に入ってすぐに深い眠りを得られる秘訣なのだ。それには寝る90分前に入浴することがいい、と西野氏は話す。
「体温は一度上がると、元の体温よりも下がる性質があります。秋田大学と共同で、温泉で深部体温を測る実験を行なったのですが、40℃のお湯に15分入ると深部体温は約0.5℃上がる。そこから元の体温に戻るのに約90分。このタイミングで眠るとぐっすり深い睡眠が得られるんです。しかし寝る直前に風呂に入ると逆に眠れなくなってしまうので、そういう場合にはぬるい風呂に浸る、もしくはシャワーで済ませるのがいいでしょう。もちろん深部体温が下がる効果はしっかり入浴した時よりも下がります。一方、運動でも体温が上がりますが、寝る前に激しい運動をすると、落ち着くまでに時間がかかってしまいます。ジョギングなどは朝起きてからのほうがいいでしょう。
もちろんストレッチなどの、軽い運動ならOKです。そして寝具の通気性が悪く、熱がこもるのもよくありません。例えば、私が開発に関わった製品は、他のウレタン製寝具よりも約0.3℃体温が下がりました。こうした差が睡眠に影響してくるのです」
また基本的には毎日の就寝時間は変えないほうがよいそうだ。定時に寝ることで、入眠する時間が脳にセットされ、「黄金の90分」もパターン化、成長ホルモンも分泌しやすくなるのだ。明日はいつもよりも早く起きなければいけないという日でも寝る時間は変えないほうがいい。寝る時間を前倒しをしても、良い睡眠を得るのはかなり難しく、逆に眠れなくなってしまうので注意だ。
■深部体温が〝ぐっすり〟の肝