肌に直接触れるアンダーウエアは、快適さの要。体にフィットする仕立て、ストレスのない肌触り、さらに欲をいえば、いざという時に堂々と見せられるデコレーション。この3つを備えたパンツが、大人には必要だ。
そんな中、ワコールの男性下着ブランド『BROS(ブロス)』が注目を集めている。理由は、はっきりと違いのわかるはき心地。
女性下着で名の知られたメーカーが、女性デザイナーを起用することで、従来の男性下着では味わえなかった、未体験の気持ち良さを開拓しているのだ。
女性が下着に感じる心地良さは、男性も共有できる
現在、ワコールにはふたつの紳士インナーウエアブランドがある。百貨店を中心に展開する高級ライン『ワコール メン』と、量販店を中心に取り扱う『BROS』だ。今回、紹介する『BROS』の持ち味は、デイリーに使いやすいデザイン、そして1300円~という手頃な価格設定が魅力だ。
「ワコールは1946年の創業当時から〝女性を美しくすること〟を目標に掲げ、肌に触れて気持ち良い素材と機能を研究・開発を行なってきました。1991年に弊社初の男性下着ブランドとなった『BROS』を立ち上げたのですが、スタート当時、ふたつの思いがございました。ひとつは、『既存のメンズインナーを変え、新しいものを作りたい』という思い、そしてふたつ目は、『下着をとおして男性がかっこよくなれば、結果的に女性を美しくすることにつながる』という思いです」と話すのは、専任デザイナーの稲積美紀さんとMD(マーチャンダイザー)担当の前田桂吏さん。
『BROS』のキーパーソンである、おふたりに男性下着開発の裏側をうかがった。左から、専任デザイナーの稲積美紀さん(以下、稲積)、MD前田桂吏さん(以下、前田)
――男性下着を女性が手掛けていることに驚きました。
稲積:10年以上、男性用下着に携わっていますけど、最初は私も戸惑いましたよ(笑)。作り方はもちろんですけど、女性下着と違って、男性を一般モニターとして集めることは難しかったからです。今では社内モニターという形で、試作品を男性社員にも何度もはいてもらいますが、女性と違って男性はパンツスタイルなので摩擦の負荷が大きいことはわかっていたつもりなのですが、『どうしてこんなに摩耗するの……』ということがよくありまして。ワコールは自社の品質基準を非常に厳しく設定していますが、試作品が返ってくるたびに驚かされます(笑)。
前田:試験データの数値では計り知れない、リアルな課題を突きつけられる瞬間ですね(笑)。
稲積:そうですね。男性下着は生地が勝負。男性の好みはとても繊細なんです。それに生地の耐久性だけでなく、メンズインナーは濃色が多いので、アウターへの色移りをしないかどうかも気を配る必要があるんですよ。
前田:男性は一度ハマるとリピートする方が多いですけど、少しでも違うと感じたら二度と手に取りませんから(笑)。『BROS』のデビュー当初の主力は、ブリーフパンツとトランクス。15年ほど前からボクサーパンツを追加して、近年はヒップアップ効果などの機能性を打ち出してきましたが、機能性下着市場が飽和状態に。そこで2015年にリブランディングを図りました。それは、男性があまり気づいていなかった、下着の気持ち良さを改めて知ってもらうため、素材や設計によりはき心地、加えてデザインにこだわった下着を作っていこう! という戦略です。