「カップラーメンの真のうまさを味わいたい」
ふと、そんな思いが頭をよぎった。普段何気なく口にしているカップメンだが、手軽さゆえ、いい加減な湯量で作ってしまったり、栄養を気にして卵を入れてしまったり、3分待ち切れずに食べてしまったり、テキトーに済ませてしまうことが多い。
便利なカップメンだからこそ、今まで「味わって食べる」ことをしなかった。商品パッケージに記載されている「作り方」を遵守し、真の美味しさを体験したことが一度もない。
商品開発担当者が私たちに美味しさを届けるため、日夜その味を研究・追求しているというのに、私はその努力を無下にしている。だからこそ今回は、担当者が「これでいこう!」と唸ったあの味を再現するべく、「本気を出して」作ってみたい。
この記事は、その奮闘を記したものだ。
真のカップメンを作るための5つの条件
カップメンの本来の味を再現するため、まずは挑戦する商品を決め、仮説を立てる必要がある。仮説というのは、「真のカップメンを作る上で必要なもの」「それを達成する上での必須条件」だ。
はじめに今回挑戦するカップメンを決めた。東洋水産が発売する「麺づくり」シリーズ味噌ベースの「担々麺」だ。
東洋水産株式会社の公式サイトより(2018年6月29日現在)
これに決めた理由は1つ。私が好きだからだ。もちもちした麺、辛みの中に際立つ甘みのあるスープ、鼻腔をくすぐる味噌の香り、ほどよくお腹が満たされる量のバランス、すべてが好みだ。正直なところ、日清食品の「麺職人」の「担々麺」と迷ったが、麺の好みの差で「麺づくり」を選んだ。とてもハードな決断だった。
では、次に仮説を考えてみたい。作り方を読み解いた上で、現段階で考えられる問題は、
(1)正確な湯の計量
(2)湯沸かし器の中に残るお湯
(3)湯を入れて5分後にフタを開ける正確無比なタイミング
(4)一滴残らず液体スープを入れる工夫
(5)手早く正確に麺とスープと具材を混ぜ合わせ、いち早く口に運ぶ箸さばき
といったところだろうか。これらをすべてクリアして、はじめて真のカップラーメンを食せる。この問題に対処すべく、普段使わない頭をウンウン唸らせた筆者は、以下のような解決策を導き出した。
(1)計量カップによる目視では誤差が生まれてしまう。そこで「1g=1ml」という性質を活かし、水をグラムで計量する。
(温度によってわずかに水の質量が変化するが、人間の味覚ではその変化まで感じ取ることができないだろうと、今回は無視)
(2)湯沸かし器に残るお湯を計測するため、ティッシュで湯をふき取る。その重さを計測することを5回繰り返し、平均値をとる。
※(ティッシュに含まれる湯量-ティッシュの重さ)で計測した5回分のデータの総和/5=湯沸かし器に残る湯量の平均値「必要な湯量410ml+平均値」の水を湯沸かし器に入れて沸かす。
(沸かすことで蒸発する水量など様々な条件で確実に誤差が生じるが、その誤差による味の変化は感じ取れないので、今回は無視)
(3)スマホにある0.1秒単位で測定できるストップウォッチを活用し、ジャスト300.0秒でフタに手を伸ばす。
(4)液体スープの容器がビニールであることに着目。クリップを挟み込んでスライドさせ、その圧力ですべてを搾り取る。
(5)根性で乗り切る。
ここまでそれぞれ解決策を考えたが、あくまで机上の話だ。この方法が本当に正しいのか検証する必要がある。
何事も実践だ。いざ、作ってみよう。