■拡大などの影響で座席定員が減る
フリースペースは各車両にあり、車椅子やベビーカーのほか、スーツケースやキャリーバッグといった、大型の荷物にも対応している。その一部分にはパネルヒーターが設置され、冬季でも快適に過ごせる。
袖仕切りは立客向けに、縦長のクッションパネルを設けた。E235系などのクッションパネルは横長なので、斬新に映る。坐れなかったとき、ここへもたれると、いくぶんラクに過ごせそうだ。
乗降用ドア脇のスペースも5300形の210ミリから、330ミリに拡大され、乗り降りしやすくしている。このため、各車両1番ドアから2番ドアまでのあいだ、2番ドアから3番ドアまでのあいだのロングシートは、8人掛けから7人掛けに変更された(1・8号車の一部を除く)。
蛇足ながら、ロングシートの座面が「盾」として使用できるかについて、車両課長にお伺いしたところ、「想定していない」という。
■LCDのささやかな配慮
乗降用ドア上の旅客情報案内装置は、17インチLCDを2画面搭載。左側はデジタルサイネージ、右側は次駅案内などを表示する。また、LCDの下に出っ張りがあり、手がつかめるように配慮しているという。
後日、関東他社の車両を確認したところ、東武鉄道、東京メトロ、東京急行電鉄は「出っ張りあり」に対し、JR東日本のE231系500番代などは「出っ張りなし」。ただ、身長190センチ以上の人が誤って出っ張りにぶつかると、ケガをする可能性もあるため、「LCDは出っ張りつきに統一してほしい」とはいえない。
LCDの下には、開閉時に点滅するドアランプを設置。ドアチャイムについては、JR東日本首都圏電車と同じ音が鳴動する。
このほか、室内灯はすべてLED、防犯カメラを各車両に4台設置。冷房装置は5300形に比べ能力を向上、併せて空気清浄器を搭載し、より快適な環境づくりに努めている。
同局は5500形全27編成を総合車両製作所に一括発注しており、2021年度まで従来の5300形を順次置き換えるという。
■オープン戦と取り直し
今回の5500形報道公開は、“「試乗会」という名のオープン戦”も兼ねており、メディアは浅草橋から乗車。一旦、引上線へ入ったのち、馬込車両検修場へ向かう。
5300形の柔和な表情に比べ、5500形はいかつく、いかにも速そうに見える。先述した通り、最高速度は120km/hで、都営浅草線内では性能を持て余している。そのせいか、電動車に乗っても5300形より静かに走る。“本気”を出したら、どれだけ“ボリューム”が大きくなるのだろうか。
西馬込を過ぎると、地上へあがり、馬込車両検修場へ。起床したときから雨が降り続いており、やむ気配がない。すると、同局から「3日後、外観のみ」ながら、撮影会を実施するというサプライズ放送が流れた。素早い対応に感謝したい。
列車はスイッチバックをしたのち入庫。その後、5500形がゆっくり走行するシーン、様々な行先の表示、車内の撮影会が行なわれた。
3日後、“取り直し”。“本割”の雨とは大きく異なり、P-KAN。このとき、5500形第2編成が搬入されており、参加メディアは充実した取材ができた。
「日本らしさとスピード感が伝わる車両」というコンセプトを引っ提げて、デビューする5500形。同局の自信作は、“乗ったときから、お・も・て・な・し”を感じさせる車両に成長してゆくだろう。
【取材協力:東京都交通局、江戸切子協同組合】
取材・文/岸田法眼