2.「そんなことも分からないのか」
言い換え表現「OK。もう一度、自分で調べてみよう」
答えを知る者は、答えを知らない者を見下す。この「情報優位性の心理」は、どんな人にもはびこるものです。自分の分かっていることを部下が分からないと、部下の能力やビジネスパーソンとしての資質を過度に疑い、否定するよう発言をしがちです。「そんなことも分からないのか」は、その代表例です。
ですが、その疑いや否定は「過度の錯覚」といえるでしょう。上司と部下では、情報の格差や理解能力のレベルに差があって当然だからです。自分にも分からない時代があったはずですし、部下が分からないときに、分かるように導くのが上司の役割でもあります。
まずは、「OK」と、分かっていないその事実を引き受ける。かといって、すぐに答えを与えるのではなく、「もう一度、調べてみよう」とか「どうすればいいと思う」と質問を投げかけて、自分自身で考える機会を与えましょう。
3.「何度言ったら分かるんだ!」「何度も同じミスをするな」
言い換え表現「同じミスを起こさないために、具体策を一緒に考えよう」
「怒りは部下を無能する」という心理学的な考え方があります。「何度言ったら分かるんだ!」と怒鳴り、「何度も同じミスをするな」と言葉を荒げる。そうした状況が繰り返されると、人間はダメージを最小限に抑えるために「防衛」という無意識の心理的戦略をとります。それが「聞き流す」という行為です。実は、これがミスを繰り返す原因になるのです。
「注意を聞き流す」のは、本人の能力や性格的な欠陥によって発生しているのではなく、環境がそうさせているのだと考えてみてください。
怒りは何の解決にもなりません。「怒られるのが嫌だからミスをしない」という「恐れ」によって動かされている社員ではなく、「ミスをしないことが皆のためになる」という「利他」を軸に考えられる自律型社員を育てたいものです。
さらに、「何度も同じミスをするな」という過度の叱責が意味をなさないのは、解決につながらないからです。解決は解決策があって達成されます。
そこで、ミスを繰り返す部下がいるなら、「どうすればミスが減るか」、その具体策を一緒に考える機会を持ちましょう。one to oneのミーティングをして部下の話をよく聴くことです。そこで分かってくることが必ずあります。
基本的なスキルが足りてないだけかもしれませんし、軽度の鬱状態にあるのかもしれません。ミスが多発するのは心が疲れているサインです。スキルが不足しているのであれば、上司としてそのスキルを教えてあげましょう。スキル習得型の研修を受けさせることも可能でしょう。もし、心が疲れているのなら休みを取らせることです。
このようにして解決に結びつく具体策を一緒に考えていくことが、過度の叱責よりも、ミスを減らす有効な解決策となります。