上司やリーダーの立場として、部下やメンバーが自分の思い通りに動いてくれないという悩みを持っていないだろうか。その原因は複数考えられるが、今回は、部下やメンバーに対して、NGな発言をしてしまっているという原因を解決するために、リーダー育成講師に、部下やメンバーを動かす言い換え表現を教えてもらった。
■部下からヒンシュクを買っているNGフレーズ
次のような表現は、よくテレビドラマや漫画などでも見かけるお決まりの上司の発言だ。
・「なんで言われた通りのことができないんだ?」
・「そんなことも分からないのか」
・「何度言ったら分かるんだ!」「何度も同じミスをするな」
・「やる気がないなら帰れ」
しかし、これらはいずれも部下からすればモチベーションが上がるような言葉ではない。
最近では、このような表現をするとパワハラと思われかねない状況ですらある。
もし頻繁に使っているという場合、代替え策が必要だ。
■部下が動く!言い換えフレーズ4選
そこでリーダー育成を行う研修講師で心理カウンセラーの松山淳氏に、この4つのフレーズに対して、うまい言い換え表現を教えてもらった。いずれも「部下が動く」フレーズである。
1.「なんで言われた通りのことができないんだ?」
言い換え表現「私の指示通りではないみたいだけど、私の指示したことでわからない点があったかな?」
「聞き手の粗相(そそう)は、言い手の粗相」という言葉をご存知でしょうか。聞き手のしたことに失敗や誤りがある場合、言い手の伝え方にも問題があることから、言い手にも責任が生じるという意味です。
「なんで言われた通りのことができないんだ?」と言ってしまうと一方的に責任を押しつけており、部下が100%悪いことになってしまいます。しかし、本当にそうでしょうか。
指示通りに部下が動かない原因は「スキルの欠如」と「指示の誤解」の2つが考えられます。問題なのは指示の誤解が完全に部下のせいだと決めつけることです。しかし実際は、指示した側と指示を受けた側、両方に責任があります。
もちろん、上司が正確に指示をしたのに、部下が単純に誤解しているケースもありますが、「あうんの呼吸」「忖度(そんたく)」「行間を読む」といった他者の発する言葉を受け手が積極的に汲み取ることを潔しとする我が国のコミュニケーション文化にあっては、言い手の「言葉が足りていない」ことが「指示の誤解」を生む要因になりがちです。
ですから、まず自分の「言い方」「伝え方」に齟齬があった可能性を検討する言葉を発して欲しいのです。「私の指示で何かわからなかった点があったかな?」といった風に。
そうすれば、部下の仕事を頭から否定することにはならいので、部下の心に与えるダメージも少なくなりますし、その結果として、部下も自分に過ちがあったことを受け入れやすくなります。
ちなみに「聞き手の粗相は、言い手の粗相」は、私が若手社員だった頃の上司の口癖であり、この言葉に何度も助けられました。その上司を尊敬するきっかけになった言葉です。言わずもがなですが、その上司はとても仕事のできる人でした。
【参考】指示の誤解を防止する対策「リピート」
指示したことが理解されているかを確認するために、指示した内容を相手に繰り返させる「リピート」という方法もある。