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自分で自分を縫うってどんな感じ?医師が語る奥深き「縫合」の世界

2018.05.19

■ブラックジャックに学んだ、自分で自分を縫うコト……

 たとえ医師でも、自分を縫う場面に遭遇することはまずありません。先の場面で私の脳裏に浮かんだのが、漫画『ブラックジャック』の主人公「ブラックジャック先生」。漫画『ブラックジャック』は、作者の手塚治虫氏が医師であったため、1973年頃の作品でフィクションにも関わらず、医学的リアリティと医師や医療のあり方が描かれており、現代でも医師を目指す若者の教科書的な存在で、私自身も愛読していました。作中で何度か「ブラックジャック」が自分で自分を手術するシーンが登場します。

 さて、出発の時間が刻一刻と迫る中、手元には縫合道具も揃っていて、私自身は縫合の技術も備えています。

 この時、私の脳裏に浮かんだことは……

(1)もし縫わなければ、ガーゼなどを使って傷を塞がなければならないこと。この後の移動中や旅先での消毒やガーゼ交換は難しいこと
(2)ガーゼを付けたままだと、ケガしたことが一目瞭然であること(会議もある)
(3)よその医療機関を受診すると、<カルテを作る、診察を待つ>など手間がかかること
(4)顔面の傷を縫えない(縫わない)医師もいること

 私に選択の余地はありません。「ブラックジャック」先生に倣って、自分で自分を縫うことを決断しました。

 まず、傷の状態を確認するため、スマートフォンで写真撮影。鏡を見ながら、局所麻酔の注射を打ちます。

 前述した釣り針に似た「縫合針」を使いますが、通常とは手の向きや針の方向が逆になるので、とても縫いにくいです。抜糸の際に眉毛と一体化し、見えづらくなるのを防ぐため、通常よりも長めに糸を残します。3針程度を縫っただけですが、患者さんのキズを縫う場合に比べて、数倍の時間がかかってしまいました。出血も止まり、ガーゼで覆う必要もなかったので、そのまま会議に出席しましたが、誰もケガや縫合に気が付くことはありませんでした。数日後に自分自身で抜糸をし、傷跡も全く残ってはいません。

 結果的に自分自身で縫合したことは正しい処置だったようです。慌てていると不注意からケガをしやすいことを反省し、さらに縫われる<患者さん>側の気持ちや不安感を我が身で知る機会になりました。

 もう一度自分自身を縫いたいか? と言われたら、できれば避けたいのが本心です……。

 今回は、私の実体験をもとに「キズの縫い方」について書きましたが、ケガをする状況は千差万別です。突然遭遇する事態ですから誰しも慌てます。早めに医療機関を受診するのが良いですが、手術や他の処置を行っていることもあります。医療機関側にも準備が必要なので、受診する際には事前に電話などで問い合わせをしておくとスムーズです。

 大事なことは、「慌てる時こそ、大切な、平常心と一呼吸」!!

文/倉田大輔(池袋 さくらクリニック院長)

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