■勉強会の開催で納豆菌の理解を深めてもらう
こうした目立つ取り組みの一方で、販促では地道な取り組みも並行して行なった。まず、マスコミ各社を集めて納豆菌に関する勉強会を、これまで2回実施。納豆菌にも様々あり、それぞれ異なる機能や特徴を持っていることをアピールした。同社だけでも2200種類以上の納豆菌を持っているが、小田氏は「参加者の多くは、納豆菌の種類が多いことと、菌によって異なる特徴があることを知らず、驚いていました。いままでは何となく、体にいいと思っていたものが、なぜ体にいいのかを認識できたようです」と話す。
また、『すごい納豆 S-903』を使ったレシピも開発。「30日間ちょい足し健康レシピ」として、1か月分の納豆メニューを提案している。
特定の納豆を使ってこれだけのメニューを提案したことは、今回が初めてだという。「健康のことを考えると、できれば毎日食べてもらいたいので、ちょっとした工夫で飽きずに食べ続けられる食べ方を提案することにしました」と小田氏。1か月分の基本メニューのほか、季節ごとのメニューも提案。多くが、トッピングするだけでできる簡単なものばかりだ。
なお、小田氏のオススメは「アボカド納豆」、松下氏のオススメは「お好み焼風納豆」とのこと。これら2つを含む全メニューのレシピは、同社のHPで紹介している。
★★★取材からわかった『すごい納豆 S-903』のヒット要因3★★★
1.従来にない高い機能
これまで納豆は、納豆菌の機能に着目して開発されることがなかったが、採用した「S-903納豆菌」は免疫力アップが期待できる。糸引きの弱さなどを克服したことで、従来にない高い機能を持つ納豆ができた。
2.納豆菌の乳酸菌とWの健康効果
納豆菌だけでなく乳酸菌も摂取でき、Wの健康効果が得られる。健康を気にする人たちから大きな支持が得られた。
3.高い健康価値のアピール
食品ゆえ健康効果や効能をすべて伝えることができないため、様々な販促策を展開。『すごい納豆 S-903』が持つ高い健康価値の訴求を怠らなかった。
2002年の「S-903納豆菌」発見から2017年の『すごい納豆 S-903』発売まで、要した時間は実に15年。この間、開発がお蔵入りすることもあったが、日の目を見ることができたのは、「S-903納豆菌」が持つポテンシャルに大きな可能性を見出していたからにほかならない。納豆らしい強い粘りが、商品化を実現した。
製品情報
http://www.takanofoods.co.jp/s903/
文/大沢裕司
ものづくりに関することを中心に、割と幅広く色々なことを取材するライター。主な取材テーマは商品開発、技術開発、生産、工場、など。当連載のネタ探しに日々奔走中。近著に「バカ売れ法則大全」(共著、SBクリエイティブ)。
■連載/ヒット商品開発秘話